シュレイルがやってきたのは森の中の小さな小屋だった。 鬱蒼とした闇夜の森の中に、一光を放つ小さなボロ屋だった。 コンコン・・・ 木製の廉い作りの扉をノックすると、背の低い髭面の老爺が現れた。 老爺『誰じゃ、こんな夜中に。 おお、シュレイルか。』 シュレイル『ああ、夜分にすまぬ。 ちと頼みがあってな。』 老爺は小屋の中へとシュレイルを招き入れた。 この老爺はウィケットという此処らでは名の知れた魔術師。 そんな彼を頼ってシュレイルはやってきたのだった。 ウィケット『成程、シャロン軍の進軍を阻止したいと申すのか。』 シュレイル『ああ。 夜が明ければやつらが城にやってきてしまう。』 ウィケット『それでこのワシの力を借りに来たのだな?』 シュレイル『そうだ。 夜明けまでに何とかしなければならぬのでな。』 ウィケット『で、ワシは何をすれば?』 シュレイル『それなんだが、俺にいい案があるんだ。』 俺は自分の考えをウィケットに伝えた。 その策を聞いて、彼はニヤリと怪しく笑んだ。 その後、俺は急いで城に戻った。 もう準備は整った。あとは時を待つだけだ。 俺は城内の兵に作戦を伝え、装備をさせる。 辺りは徐々に夜が明けつつある。 東の空に、明光が射して来た。 態勢は整った。 城の全兵を引率し、城外にて編隊を組む。 シュレイル『分かったな、今言った通りにすれば奴等は必ず撤退する。』 親衛隊長『しかし、本当にそのような策で上手くいくだろうか。』 シュレイル『案ずるな、張子の虎も使いようによっては役に立つものだ。』 親衛隊長『我が軍勢はシャロン軍の半分もないのだぞ。』 シュレイル『それだけあれば十分だ。 虎の威を借りるのだからな。』 シュレイルは、自信に満ちていた。 愈々明るくなる空が、まさに自分の心理状態を暗示しているかのようだった。 時はやってきた。 朝もやの中、シャロン軍が遠方よりやってくるのが確認できる。 シュレイル『愈々だな。』 親衛隊長『本当に大丈夫なのだろうな?』 シュレイル『大丈夫だ。 今頃はウィケットがやってくれているはずだ。』 親衛隊長『ウィケットだと? ああ、あの森の魔術師か。』 シュレイル『そうだ。 彼に全てを託したのだ。』 シュレイルは笑みを浮かべ、遠方より来たるシャロン軍を見つめていた。 その自信に満ちた横顔に、親衛隊長始め、軍全体が心強くなり士気が上がった。 もやに包まれ、揺れ動くシャロンの軍勢は、幻のようだった。 太陽は地平線より顔を出し、その姿をアンベルクの軍勢に見せてくれた。 それは勝気を帯びたかのような、力強い光だった・・・。
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