Blood Fairy
第2章





森は直ぐに抜け出すことができた。

ルシオンのいた開けた場所は、丁度森の入り口だったのだ。

シュレイルは早速ルシオンに跨り、アンベルク城へと向かって行った。



城に着く手前で、シャロン軍の軍勢と遭遇したが、俺は上手く谷を縫って死角を走った。

奴等は重機や火器も装備している。

早急にこちらも装備を整えねば最悪の事態になりかねない。

日も沈みかけた夕刻に、涸れ川の谷をひたすらにルシオンを走らせる。

シャロン軍は歩兵も多勢であるので歩みは速くない。

ルシオンの駿脚でシャロン軍を次々に追い抜いてゆく。

そしてなんとか無事にアンベルク城に到着した。

もう既に日も沈み、城の明かりが灯っている。

と、門前に回ると、楼上の守衛がこちらを警戒するのが見えた。



シュレイル『王から召還されたシュレイルという者だ。 通してくれぬか。』

守衛『シュレイル・・・? ああ、存じております。 今門を開けさせます故。』



ゴゴゴゴと低い音を立てて大きな両門が開いていく。

俺はもう厳戒体制を敷いているものかと思ったが、そうでもなかった。

城の中庭では兵たちがあちこちで慌ただしく動いているが、まだ体勢は整っていないようだ。

俺はルシオンを厩に繋ぐと城内へと入っていった・・・。



王『それではシャロンの軍勢がもうそこまでやってきていると申すのか?』

シュレイル『左様で御座います。 明朝には城にまでやってくるかと。』

王『そうか・・・。 うむ、下がってよいぞ。』



王は側近たちに大至急軍備を整えるよう指令を下した。

すると愈々城内は慌ただしくなっていった。

シュレイルも戦略会議に出席し、シャロン軍の現状を具に伝える。



シュレイル『奴等が城へ着くのはあと半日もないであろう。』

親衛隊長『重機も装備していると聞いたが。』

シュレイル『左様、いかにも射程の長そうなものだった。』

親衛隊長『となるとこちらも重機を用意せねばなるまいな。』

シュレイル『そのことなんだが、俺にいい考えがある。』



シュレイルは、さも意味ありげな笑みを浮かべると、指揮官の任を受けた。

シュレイルにはある思索があった。

必ず、シャロン軍を撤退させることが出来ると心に強く思っていた。

それから真夜中、草木も眠る時刻に、シュレイルは城を飛び出して行った。

月が蒼く光る、蒸し暑い夜だった・・・。





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