〜第4章〜



 次の週、今日も放課後は全員パソコン室に集まっていた。
先週入部したばかりの乾美江も加えて。


 土宮大介 「しかしな〜、まさかこの数学部に入部希望者がいるなんてな。 しかも女で」
 水永永示 「うん、オイラもびっくりマウス」
 金山雅人 「でもパソコンに興味あったって本当?」
 乾 美江 「え、はい…家にはパソコンがありませんので……」


初めての新入部員に、皆目を丸くしている。
ただ一人を除いて…。


 火向祐一 「もう〜みんな、早く作業進めてよ」
 土宮大介 「あ〜、火向さん妬いてる〜」
 火向祐一 「そ、そんなんじゃないもん…」
 水永永示 「まあ確かに話ばっかしててもしょうがないね。 進めようか」
 乾 美江 「あ、あの……私は何をすればいいでしょうか…?」
 水永永示 「あ、そっか、まだパソコン使えないんだよね?」
 乾 美江 「はい…」
 水永永示 「じゃあとりあえずみんなのやってる作業を見てていいよ」
 乾 美江 「はい、分かりました……」


全員は其々の作業に取り掛かった。
乾美江はみんなの作業の様子をじっと見ている。
珍しいものを見るような目で。
それから1時間ほどは単調な作業がひたすら続いた。
そして…


 水永永示 「よ〜し、できた!」
 金山雅人 「え、もうできたの!?」
 水永永示 「おう、一人目のキャラの完成だよ」
 土宮大介 「どれどれ、ちょっと見せてけれ」
 水永永示 「どうかな? 一応総司令官のみちるなんだけど」
 土宮大介 「おお、いい感じですな。 なんかこう、『みちる』って感じがする」
 柏木健二 「…どんな感じだよ、それ」
 土宮大介 「顔絵も萌えるし立ち絵もトゥーンレンダリングでいい塩梅だ」
 乾 美江 「とぅ…とぅーん……?」
 水永永示 「3Dキャラを2Dキャラっぽく見せる技法のことだよ」
 乾 美江 「そうなんですか…」


初めて目の当たりにする現場に、感心する乾美江。
憧れの水永永示に説明され、なんだか夢見心地のような気分の乾美江であった。


 柏木健二 「よし、こっちも戦車01の設計完成した」
 金山雅人 「じゃあ今度は僕がモデリングだね」
 柏木健二 「ちゃんと設計図通りにモデリングしろよ」
 金山雅人 「はいはい、分かりました」
 柏木健二 「エンジンはガスタービンってこと忘れずに」
 金山雅人 「エンジンって、そんな内部までモデリングするの?」
 柏木健二 「ちげーよ、内部は重くなるからいらん。 動きがガスタービンの動きなるようにしろって事。」
 金山雅人 「へいへい、了解」


兵器チームも順調に進んでいるようである。
細部にまでこだわるところが、とても柏木健二らしい。


 水永永示 「ところで土宮君はどこまで進んだ?」
 土宮大介 「あ〜、今戦闘システムのプログラミング中」
 水永永示 「いつ頃完成しそう?」
 土宮大介 「そうだな〜、既存のプログラム利用してるから案外早いと思う」
 水永永示 「そっか、じゃあ頑張って下さいな」
 土宮大介 「おう、任せとけ」


それぞれ作業が進む中、火向祐一は一人葛藤していた。
自分のすべき仕事はあるものの、どうしても新入部員の乾美江のことが気になるのだった。
恋のライバル登場で、彼の人生初めての危機である。
そして外がもうすっかり暗くなった頃。


 水永永示 「よし、じゃあ今日はそろそろ終わりにするか」
 金山雅人 「そうだね、もう暗くなってきたし」
 柏木健二 「俺は丁度戦車02と03の設計が終わったから今日は終わりだな」
 土宮大介 「じゃ、帰るとしますか」
 火向祐一 「うん」
 水永永示 「えと…乾さんは電車通学?」
 乾 美江 「あ、いえ、私は家は学校の近くですので自転車です」
 水永永示 「あ〜、そうなんだ」
 土宮大介 「じゃあ電気消すぞ〜」


パソコン室の電気を消し、施錠をする。
いつものことが今日は違っていた。
この数学部ももう6人になったのである。
紅一点、乾美江が加わったことでこの数学部にも華が咲いたのだった。
校門前で乾美江と別れた5人。
いつもの下校時間は夏めいてきた空気に包まれていた。


 土宮大介 「しかしあれだよな、あの新入部員、結構かわいいよな〜」
 金山雅人 「うん、絵に描いたような美少女って感じ」
 柏木健二 「でも水永君はやっぱ2次元専門でしょ?」
 水永永示 「うん、オイラには千佳たんがいるからね」
 火向祐一 「永ちゃん!?」
 水永永示 「あ、ウソウソ、お前もいるさ…」
 火向祐一 「お前もって何よ、『も』って!」
 水永永示 「わ、分かったよ、今度イチゴパフェおごってやるから…」
 火向祐一 「ホント!? やった〜!!」
 水永永示 「はぁ…」
 金山雅人 「火向君も大変だね…」
 水永永示 「まあ、いつものことだから…」
 土宮大介 「ヤベ、電車来てる! みんな急げ!!」


土宮大介の一声で一斉に走り出す5人。
オタク界の陰陽師は、今日も我が道を行く。



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