〜第3章〜



 次の日から、5人は出し物のゲーム制作に精を出していた。
プロジェクトが発足してからと言うもの、5人の士気は高まる一方だった。


 柏木健二 「戦車01はエイブラムスとタイガーのデザインを融合させるか」
 金山雅人 「うん、それいいかもね」
 柏木健二 「外観はやっぱ砂漠迷彩ってとこか」
 金山雅人 「砂漠迷彩? 普通の迷彩でよくない?」
 柏木健二 「じゃあ両方作るか」
 金山雅人 「両方? ん〜、まあ時間あるしいいと思うよ」
 柏木健二 「よし、じゃあ俺が設計した戦車のモデリング頼むな」
 金山雅人 「了解〜」


戦車や戦闘機などの兵器ユニットは柏木健二と金山雅人の2人で行っていく。
この2人が兵器チームである。
ラフ画で柏木健二が設計し、それを元に金山雅人がLightWave3Dを用いてモデリング。
戦車などの陸のユニットは、迷彩と砂漠迷彩の2種類用意することとなった。
日頃慣れた3Dソフトを使うので、作業も捗るというものである。


 水永永示 「キャラは何人くらい必要かな?」
 土宮大介 「そうだな〜、各国に10人は欲しいな」
 水永永示 「え、マジで? 10人…ってことは全部で50人?」
 土宮大介 「無理ポ?」
 水永永示 「いや、顔絵と立ち絵なら何とか間に合うと思う」
 土宮大介 「立ち絵は3Dで……できる?」
 水永永示 「……ま、やってみます…」
 土宮大介 「そっか、じゃあ頼みますな」


キャラクターは全部で50人。
余りの数の多さに、流石の水永永示も完成には自信は無いようである。
ゲームの概要は5人まで同時対戦可能の戦略シミュレーション。
登場するキャラクターは今流行りの萌え絵の女の子たちである。
5カ国其々10人のキャラクターを登場させ、女の子たちがドンパチする対戦ゲーム。
かなり大規模なゲームになること間違いなしである。
一般のコンシューマーゲーム並のゲームを作ろうと言うのである。
彼らの能力は、それをもこなせる程なのである。
作業期間は2ヶ月。
7月初旬の文化祭までに仕上げるのである。


 火向祐一 「よし、シナリオ完成したよ〜」
 水永永示 「え、もう!?」
 火向祐一 「うん。 家でも書いてきたからね。 じゃ今プリントアウトするよ」


火向祐一は、数枚にわたるシナリオをプリントアウトした。
そしてそれをホッチキスで綴じ、全部で5部の書類に仕上げた。
彼の几帳面さが窺える。


 火向祐一 「はい、一部ずつどうぞ」
 土宮大介 「おっ、こんなに書いたのか」
 水永永示 「へぇ〜、色々練りこまれてるなぁ…」
 火向祐一 「でしょでしょ?」
 金山雅人 「シナリオは一つじゃなくて何個もあるってのがいいね」
 柏木健二 「1人プレイでも十分楽しめるってわけか」
 土宮大介 「これだけあれば作り甲斐があるってもんだな」
 金山雅人 「うん、僕たちも頑張らなきゃね」
 土宮大介 「頑張ってないのはお前だけだろ」
 金山雅人 「はっ!?」


いつものように一人からかわれる金山雅人。
暗くなり始めたパソコン室に、5人の笑い声が響いていた。



 そしてそろそろ帰ろうかと話をしていた時のことである。
パソコン室のドアをノックする音が聴こえたかと思うと、誰かが入ってきた。
「失礼します」と言って入ってきたのは、あの乾美江だった。
先日、水永永示に告白した彼女である。
全員が呆然としていたのは言うまでも無い。


 乾 美江 「あ、あの、私……数学部に入りたいんです!」
 水永永示 「え!? 何だって…!?」
 乾 美江 「だ、だから…えと……私、数学部に入部希望です」
 土宮大介 「この数学部に?」
 乾 美江 「はい、もう入部届けは出してありますし…」
 水永永示 「ちょ、ちょっと待って……何でこの数学部に…?」
 柏木健二 「やっぱ水永君がいるから?」
 乾 美江 「……それもありますけど…私、前からパソコンに興味があったんです……」
 水永永示 「………」
 土宮大介 「どうする? 部長が決めることだぜ」
 火向祐一 「私は認めないよ!!」
 金山雅人 「火向君……」
 火向祐一 「だって……私の永ちゃんに告白なんてしてさ!」
 乾 美江 「えっ!?」
 水永永示 「ば、バカ!?」
 柏木健二 「でももう入部届けも出しちゃったって言うしさ」
 金山雅人 「うん、少しでも部員は多い方が楽しいじゃん」
 土宮大介 「それにこんなかわいい子が入部しれくれれば華が咲くってもんだ」
 火向祐一 「私がいるじゃん!?」
 土宮大介 「いや火向さんは男だろ…」
 柏木健二 「火向君には悪いけど、多数決で入部認めるしかないよな」
 水永永示 「うん、オイラも入部は認めるよ」
 乾 美江 「え、ホントですか!?」
 水永永示 「おう、来るものは拒まずだよ」
 火向祐一 「むぅ〜、入部したとしても永ちゃんは私のものだからね!!」
 乾 美江 「…は、はい……分かってます…」
 金山雅人 「じゃ改めて迎え入れてあげようよ」
 水永永示 「そうだな」
 5人   「ようこそ、我が数学部へ!」


全員声を揃えて言った。
この日の為に、5人は密かに何度も練習していたのである。
火向祐一も、不満そうな顔をしながらも迎え入れるのを許していた。
温かく5人に迎え入れられ、女の子は笑顔の中にうっすら涙を浮かべていた。
5人から6人になった数学部。
彼らの冒険は、まだ始まったばかりなのである。



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