〜第5章〜



 6月の終わり、6人は来週に迫った学園祭に向けてラストスパートに入っていた。


 土宮大介 「よし、あとはネットワーク構築だけだ」
 水永永示 「オイラもキャラクターは全部終わったよ。 あとはBGMだけ」
 金山雅人 「こっちもほとんど終わり。 あとは潜水艦と空母のモデリングだけだよ」
 火向祐一 「パンフレットもほぼ完成したよ。 みっちゃんが手伝ってくれたからね〜」
 乾 美江 「はい、やっぱり2人でやったほうが早いですしね」


火向祐一と乾美江はすっかり仲良くなっていた。
元々女の子とすぐ打ち解けるタイプの火向祐一。
互いにライバル視しているうちに仲良くなってしまったのである。
今では親友の関係にまでなったのであった。


 火向祐一 「パンフレットは何部ぐらい刷ればいいかな?」
 水永永示 「そうだな〜、とりあえず200あれば十分でしょ」
 土宮大介 「パンフレット、全部で何ページくらいあるんだ?」
 火向祐一 「えっとね、20ページだよ」
 土宮大介 「20ページか、随分あるんだな…」
 火向祐一 「うん、操作説明からストーリー説明、キャラクター紹介入れたら膨らんじゃった」
 水永永示 「ちょっと多い気もするけど、まあいっか」
 火向祐一 「じゃあもう刷っちゃっていいかな?」
 水永永示 「おう、頼むよ」


水永永示に言われ、火向祐一はパンフレットの印刷を始めた。
刷り終わったのを乾美江が綴じて製本していく。
流れ作業はやっぱり効率がよい。
5台のプリンターを駆使し、次々と印刷をしてゆく。
その後1時間程で全ての印刷は完了した。



 次の週、いよいよ学園祭の前日。
全ての制作は終了した。
壮大なプロジェクトの完成である。


 水永永示 「よっしゃ! やっと完成したね」
 土宮大介 「かなり長い道のりだったな…」
 金山雅人 「これでやっと肩の荷が下りたよ…」
 柏木健二 「本番は明日だろ、まだ荷を下ろすのは早いぞ」
 火向祐一 「そうだよ、公開するのは明日なんだからね」
 乾 美江 「いよいよ明日ですね…」
 水永永示 「みっちゃん、明日は呼び込み、頼むね」
 乾 美江 「あ、はい!」


目を輝かせて返事をする乾美江。
本番は明日である。
全員の士気は最高潮に達していた。


 柏木健二 「しかしよくもまあ完成したもんだよな」
 金山雅人 「ホントだよね、こんな大作最初は無理かと思ってたけど」
 土宮大介 「C言語のソースだけで50MBだもんな」
 金山雅人 「全部で600MBだもん、PS2のゲーム並だよ」
 水永永示 「これもみんなで協力したお陰だよ」
 柏木健二 「まあ俺たちにかかればこの程度は朝飯前ってことだな」
 土宮大介 「柏木さんテングになりすぎ(笑)」
 柏木健二 「はは。 まあ明日客にやてもらって評価してもらうか」
 金山雅人 「そうだね」
 水永永示 「よし、じゃあそろそろ帰ろうか」


6人は意気揚々とパソコン室を出た。
飾りつけも終わり、いよいよ明日ゲームを公開するだけである。
戸締りをして外に出るともうそこは真っ暗闇だった。
時刻は夜7時を回っていた。


 乾 美江 「ではみなさん、私はこの辺で…」  水永永示 「うん、明日頑張ろうね」
 火向祐一 「みっちゃん、また明日ね〜」
 乾 美江 「はい! では失礼します」


一礼すると、乾美江は校門前で自転車に乗って帰って行った。
その後姿を見送る5人。
もうすっかり部員になった彼女に皆それぞれ違う思いを抱いていた。


 火向祐一 「明日楽しみだね」
 金山雅人 「うん。 あれだけの大作だもん、来客の期待大だよ」
 水永永示 「あの新聞部も盛大に取り上げてくれたし、宣伝はバッチリってもんだよ」
 土宮大介 「俺もサイトで大々的に広告しておいたからな」
 金山雅人 「そっか、そりゃ期待できそうだね」
 柏木健二 「でもマスコミが取り上げてくれなかったのが痛いけどなぁ〜」
 土宮大介 「マスコミも暇じゃねぇからな。 高校の文化祭なんかよりやっぱ有名人のゴシップだろ」
 火向祐一 「有名人と言えば大くん、今年は誰も招待してないの?」
 土宮大介 「ああ、今年は虎の威を借りずに自分たちでどこまで集客できるか試すんだよ」
 水永永示 「そっか、じゃあ今年は去年を上回ったらやっぱオイラたちの力があるってことだね」
 土宮大介 「ま、そうなりますな」
 柏木健二 「でもあれだけの大作、学園祭で公開するのは勿体無いな」
 水永永示 「そうだよね、ゲームコンテストにでも応募すれば入選は確実なのに」
 土宮大介 「心配には及ばない、もう応募してある」
 柏木健二 「え、マジで!?」
 火向祐一 「やっぱ大くん、手が早いね〜」
 土宮大介 「まあな。 賞金貰ったら山分けな」
 柏木健二 「もちろん」
 金山雅人 「なんか今から楽しみだね」
 土宮大介 「いやお前には分けないよ」
 金山雅人 「はっ!?」


5人はいつものようにバカ笑いながら電車のボックス席を占領していた。
当然の如く一人はぶられた金山雅人。
それもいつしか本人も気にすることはなくなっていた。
同じ電車内には学園祭の準備で遅くなった生徒が大勢いた。
学校中に知れ渡っている数学部の出し物は、5人の知らないところでも話題になっている。
周りの生徒たちはちらちらと5人を見てはその話をするのだった。
明日の学園祭は5人にとっても特別なもの。
自信の大作の公開を、今か今かと待ちわびる5人だった。



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