〜第2章〜



 水永永示は図書館の前に来ていた。
目の前にいるのは、初めて見る女の子。
春の日差しが、踊り場の高窓から差し込んでいた。


 女の子 「あ、あの…私…1年2組の乾美江と言います…」
 乾美江 「前から先輩のこと…ずっと見てました…」
 乾美江 「えと……私と付き合ってくれませんか…!?」


女の子の告白。
水永永示はこれまで経験の無いことに戸惑っていた。
隠れファンは多いが告白されたことが無い水永永示。
こんなオタッキーな自分に好意をもってくれていることに嬉しさを感じていた。
見ると女の子はかなりかわいいタイプである。
セミロングのヘアーに小柄な体型。
年齢的には13〜4歳に見える。
もしも付き合えばあんなことやこんなことができる…。
そんな不粋な考えを巡らしていた時のこと。
廊下の向こうの角で、誰かが見ているのが分かった。
火向祐一である。
自分の彼氏がどこの馬の骨とも知らぬ女に奪われると思って隠れて見ているのである。
水永永示は意を決して言った。


 水永永示 「ごめんね…オイラには付き合ってる人がいるんだ…」
 乾 美江 「あっ、そ、そうですか……分かりました……では失礼します…」


そう言うと女の子は悲しそうにしながら帰って行った。
その後姿を、複雑な思いで見送る水永永示。
廊下の向こうには、満面の笑みを湛えた火向祐一が手を振っていた。
自嘲気味に笑いながら水永永示も手を振り返す。
2人は合流し、パソコン室に戻って行った。


 土宮大介 「おっ、帰ってきた帰ってきた!」
 金山雅人 「水永君、どうだった?」
 水永永示 「振っちゃった……」
 柏木健二 「え? マジで?」
 土宮大介 「あんまタイプじゃなかったとか?」
 水永永示 「いや、結構オイラのタイプだったよ……」
 金山雅人 「じゃあどうして…?」
 水永永示 「……こいつがいるから…」
 火向祐一 「えへへ〜」
 土宮大介 「…そうか、そうだよな…」
 柏木健二 「…水永君も大変だね…」
 水永永示 「まあオイラの専門は2次元の女子小学生だからいいけどね(笑)」
 火向祐一 「おいっ!」


火向祐一のお陰で、彼女を作り損ねた水永永示。
そんな彼の理想はやっぱり2次元の小学生の女の子。
彼には一生彼女が出来ない…のかも?



 ゴールデンウィーク明けのある日のこと。
数学部の中は慌ただしく動いていた。
もうすぐ行われる文化祭へ向けての準備が始まったのである。
部長の水永永示は部員全員に出し物を何にするか募っていた。
全員と言っても全部で5人なのだが。


 水永永示 「今年の出し物は何にする?」
 柏木健二 「俺のモビル展示は?」
 土宮大介 「それ柏木さんだけやん。 じゃ俺はPCでゲームでも作るか。 エースコンバットみたいなシューティングとか」
 金山雅人 「それじゃあ僕はスターリングラード攻防戦で使用された短機関銃PPS42モデルの展示にするよ」
 火向祐一 「私は三国志の小説書くよ。 やっぱ官渡の戦いがいいかな〜」
 水永永示 「ちょっと待て、みんな別々の出し物ってのはどうかと思う」
 土宮大介 「まあそれもそうだ」
 金山雅人 「じゃあどうするの? 何やるの?」
 水永永示 「だからそれを今から決めるんだろ」
 火向祐一 「じゃあ喫茶店はどう?」
 水永永示 「何でやねん…数学部なのに喫茶店は無いだろ…」
 金山雅人 「やっぱパソコン扱ってるんだからPC関係の展示がいいよね」
 柏木健二 「まあ、それが妥当だろうな」
 水永永示 「あ、いい案があるぞ!」
 火向祐一 「え? なになに??」
 水永永示 「ネットワーク型対戦ゲームなんてどう?」
 土宮大介 「あ、それいいかも」
 水永永示 「でしょ? これなら集客率もよさそうだし」
 金山雅人 「でもそれ実現できるの? なんか難しそうだけど?」
 土宮大介 「大丈夫、俺が全部指揮ってやるから」
 柏木健二 「じゃあこれで決まりだな」
 水永永示 「うん。 じゃ次はどんな内容にするか決めようか」


ゲームのこととなると俄然やる気になる土宮大介。
この文化祭のプロジェクトの指揮は彼が執ることになった。
そして出し物は最終的に萌え系ネットワーク型対戦戦略シミュレーションゲームに決まった。
各々の特性を最大限に活かせるプロジェクトの誕生である。


 土宮大介 「じゃあ俺はネットワーク構築とプログラミングな」
 水永永示 「オイラはサウンドとキャラクターデザインね」
 金山雅人 「じゃあ僕は歴史的背景設定と兵器デザイン」
 柏木健二 「俺はメカとマシン、兵器の設計と設定」
 火向祐一 「私はシナリオ書くよ」
 水永永示 「じゃあ最高のゲーム目指して頑張ろう!」
 全員   「おおーーーー!!」


全員の士気は最高潮に達していた。
其々の長所を活かした出し物が出来る。
そんな空気の中、5人はいつまでも楽しくダベっているのだった。
暗くなった廊下で、この間の乾美江がパソコン室を覗いていた。
そのことには、誰一人気付くことは無かった。



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