ドキドキ肝試し


 別荘の中はとても広く、5人は目を丸くしていました。
2階まで吹き抜けになったエントランス。
奥にはダイニングとキッチンがあり、キレイに片付いています。
冷蔵庫まであり、本格的な別荘です。

信恵「すごいなぁ〜、これが別荘か…」
雅博「うん、すごいよね…」
美羽「これだけ広けりゃ野球もできるね」
信恵「できねぇよ」
アナ「みなさん、荷物はその辺に下ろしてください」

アナちゃんの言葉でダイニングの隅の方に荷物をまとめて置きました。
そしてソファに座り、みんな一息つきました。

千佳「それにしても広いよね〜、何部屋あるの?」
アナ「えと、1階に2部屋で2階には3部屋ありますわ」
茉莉「へぇ〜、そんなにあるんだ…」
美羽「じゃあ一人一部屋だね」
信恵「いや、一部屋足りないだろ」
美羽「お兄ちゃんはトイレに寝てもらうからいいんだよ」
雅博「おいっ!」

美羽の言葉に、みんな笑顔になっていました。
雅博もつられて笑いました。
いつもの時間が、ここでも流れていたのです。

千佳「でも寝る時どうするの?」
信恵「アナちゃん、部屋って全部使ってもいいの?」
アナ「あ、はい、多分大丈夫だと思います」
美羽「ね〜ね〜、どうせならみんなで一つの部屋で寝ようよ?」
千佳「あ〜、それいいかも〜。 修学旅行みたいで楽しそうだし」
茉莉「私もみんなと一緒がいいなぁ」
信恵「じゃあそうするか…。 アナちゃん、みんなで寝れるぐらいの広さの部屋ってある?」
アナ「はい、この奥の和室なら多分6人寝れますよ」
千佳「そっか〜、よかったね、茉莉ちゃん」
茉莉「うん!」
美羽「よかったね〜、お兄ちゃん」
雅博「え? あ、うん!」
美羽「『うん!』だって〜、キャー! このケダモノー!!」
雅博「はっ!?」
信恵「バカはほっとけ」

夜はみんなで一緒に寝ることになりました。
茉莉ちゃんは一人で寝るのが怖いのでとても嬉しそうな顔をしています。
一方雅博は別の意味で嬉しそうな顔をしています。
しばらくダイニングでまったりしていると、大きな壁掛け時計が5時を告げました。

信恵「あ、もうこんな時間か。 じゃあそろそろ夕飯作るか」
千佳「うん、作ろう!」
雅博「千佳ちゃん嬉しそうだね〜」
千佳「うん! やっぱみんなでお料理って楽しいんだもん」
信恵「よし、じゃあみんなキッチンに集合だ」
美羽「ちゃんと美味い飯作れよ、みんな」
信恵「お前も作るんだよ。 ほら、とっとと来い」

信恵に手を引っ張られ、美羽は嫌々キッチンに来ました。
料理は分担して作ることにしました。
今日のメニューはビーフシチューとサラダです。
アナちゃんと茉莉ちゃんは食器の用意をし、千佳と美羽はサラダの準備。
そして雅博と信姉は野菜の皮むきです。
それぞれが分担して作業をすることで、準備が早く終わりました。
そしてあとは材料を鍋に入れじっくり煮込むだけです。
ビーフカレーが完成するまでの間をみんなで楽しく喋って過ごしました。
そして、ダイニングのテーブルに、6人分のビーフシチューとサラダが乗りました。
主食はビーフシチューということでパンです。

信恵「じゃあ全員でいただきますするか」
美羽「ん〜、このビーフシチュー美味いな〜」
信恵「っておい! 何先食ってんだよ!?」
雅博「もう手遅れだよ…」
信恵「え?」
茉莉「おいしいね〜」
千佳「うん、みんなで食べるとすごく美味しよね」
アナ「はい、やっぱり大勢で食べた方が楽しいですし」
信恵「…お前らなぁ……」
雅博「まあまあ、じゃ僕たちも食べようか」

楽しそうに食べる4人の女の子たちを横目に2人はいただきますをしました。
ビーフシチューのいい香りが鼻腔をくすぐります。
自分たちで用意した材料で自分たちで作る料理。
それをみんなで食べるのはやっぱり他では味わえないほど美味しいものでした。
みんな笑顔で楽しい食事の時間を過ごしました。
千佳の隣に座った雅博は、さりげなく千佳の手を握ったりしました。
みんなに秘密のその触れ合いは、雅博の心も千佳の心も、温かくするのでした。


 それから1時間後。
外もすっかり暗くなり、辺りに静寂が訪れた頃。
みんなは暇を持て余していました。

美羽「暇だ暇だ〜。 ねぇ、何かすること無いの?」
雅博「トランプならあるけど?」
美羽「トランプか…今はそんな気分じゃないんだよな」
千佳「寝るのにはまだ早いしね〜。 アナちゃん、何か暇つぶしできるようなものってある?」
アナ「えと、ここには暇つぶしをするようなものは何も…」

そして、ソファに座っていたみんなの前で、信姉が立ち上がって言いました。

信恵「よし! 肝試ししようぜ!!」
全員「きもだめし?」
信恵「おう、やっぱ夏の夜といったら肝試しだろ」
千佳「え〜、やだよ…怖いよぉ…」
茉莉「私も…そういうの苦手……」
アナ「あの、きもだめしって何ですか?」
信恵「外に出て森とか暗い所を歩いて度胸を試すゲームだよ」
アナ「わぁ〜、なんか面白そうですわ!」
千佳「え? アナちゃん怖いの平気なの…?」
アナ「はい、案外平気な方です」
美羽「はいは〜い! あたしも賛成だよ〜」
信恵「あんたはどうだ?」
雅博「え、あ、僕もやってみたい…かな?」
信恵「よし、じゃあ多数決で決まりだな」
千佳「え〜? ホントにやるのぉ…?」
信恵「大丈夫だよ。 何人かまとまって行けば」
千佳「ん〜…分かった……じゃあちょっとだけだよ…」

千佳と茉莉ちゃんはしぶしぶ合意しました。
善は急げです。
みんな別荘の外に出ると近くの森へとやってきました。
すっかり暗くなった森は、雅博でも怖く思えました。
千佳と茉莉ちゃんは、怖そうに信姉の後ろに隠れるようにしています。

信恵「よし、じゃあこの辺でいいか」
千佳「うぅ〜、怖いよぉ…」
美羽「なんだ〜、こんなとこ大したことないじゃん」
信恵「じゃあお前は一人で行くか?」
美羽「そうはイヤだ」
信恵「だったら黙ってろ」
美羽「はい…」
信恵「じゃあまずグループ分けだな。 えっと……やっぱこの3人3人だな」
美羽「うん、あたしとちぃちゃんはお兄ちゃんとだよ」
雅博「うん、よろしくね」
信恵「茉莉ちゃんとアナちゃんはあたしとだね」
茉莉「うん…」
アナ「はい、よろしくお願いします」

グループ分けが終わり、いよいよ肝試しのスタートです。

信恵「っと、スタートの前にひとつ」
美羽「ん、何だ?」
信恵「アナちゃんの話ではこの道の先に神社があるそうだ」
雅博「うんうん」
美羽「ほうホケキョ」
信恵「ただ行ってもつまんないからそこの神社の狛犬を携帯で写真を撮って来て戻ってくること」
美羽「なるほど・ザ・ワールド」
信恵「分かったな?」
雅博「うん、分かった」
信恵「じゃああたしたちが先に行くから戻ってきたらあんたらの番な」
雅博「うん、了解」
千佳「わ、分かった…」
美羽「OK牧場」
信恵「じゃあ、行って来るよ」
雅博「行ってらっしゃい〜」

信姉たちを見送る3人。
1つの懐中電灯を頼りに、森の奥へと消えていきました。
と、辺りには再び静寂が訪れました。
遠くで聴こえる波の音、ぼんやり輝くおぼろ月。
ざわざわと鳴く森の前で、雅博の両腕をさりげなく抱く少女が2人、そこにいました…。


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