日差しのように


それから数日後、雅博は千佳の家に来ていました。
今日はみんなで遊ぶ約束をしていたのです。

信恵「よし、みんなそろったな」
雅博「揃ったけど今日は何やるの?」
信恵「ん? 別に何も決まってない」
雅博「そ、そうなんだ…」
千佳「あ、じゃあ今日は外で遊ぶ? 天気もいいし」
信恵「あー、それいいな。 サッカーでもするか」
美羽「えー? 暑いよ〜。 家の中にいようぜ?」
信恵「じゃあお前だけいろ。 茉莉ちゃんとアナちゃん、サッカーできる?」
茉莉「え、サッカーやったことないよ…」
アナ「お姉さま、私もですわ…」
信恵「そっか…じゃあ丁度いいな、教えてあげるよ。 あんたはサッカー得意か?」
雅博「う〜ん、サッカーはちょっと苦手かも…」
信恵「なんだ、あんたもか。 まあ丁度いいな、サッカーやるぞ」
美羽「え〜、マジで……」

そしてみんなは外に出て行きました。
サッカーボールを持って近くの公園にやってきました。
外は真夏を思わせる程の暑さです。
ちょっと歩いただけで汗が出てきてしまいました。

信恵「よし、じゃあチーム決めるぞ」
美羽「あたしバッターね!」
信恵「それは野球だろ」
美羽「じゃあ審判やる」
信恵「ただでさえ人数少ないのに審判なんていらん」
美羽「ちぇっ、じゃあいいよ、キーパーで…」
信恵「人数少ないからキーパーもなくていいだろ」
茉莉「なんだよー、結局ひらプレーヤーかよ…」
信恵「じゃああたしのチームは茉莉ちゃんとアナちゃんね」
茉莉「あ、うん!」
アナ「はい、よろしくお願いしますわ」
雅博「じゃあ僕のチームは千佳ちゃんと美羽ちゃんだね」
千佳「お兄ちゃん、頑張ろうね!」
美羽「お兄ちゃん足引っ張るなよ」

チームも決まり、ゲーム開始です。

美羽「よし、いくぞ〜! せいや〜!!」
雅博「わっ! ちょ、ちょっと飛ばしすぎ…!」
信恵「茉莉ちゃん、アナちゃん、ボールを追いかけて」
茉莉「あ、うん…」
アナ「は、はい!」

2人は雅博の蹴るボールを追いかけます。
けれども、2人が一生懸命走っても、当然には雅博追いつけませんでした。
小学生の女の子と大学生の男の子とでは余りにも体力の差がありすぎます。
しかも茉莉ちゃんは運動が特に苦手です。
サッカーが不得意な雅博相手でも勝てるわけがありませんでした。

美羽「いえーい、1点入った!」
千佳「みっちゃんやる〜!」
雅博「美羽ちゃんサッカー結構上手なんだね」
美羽「あたぼうよ、あたしは元Jリーガーだから」
千佳「うそつけ…」
信恵「くそ〜、あんなやつに1点入れられてしまった…」
茉莉「はぁはぁ……はぁ…」
アナ「茉莉さん大丈夫ですか?」
茉莉「はぁ…だ、だめかも……」
信恵「あ〜、じゃあちょっと休もうか」

そう言うと信恵は茉莉ちゃんを連れて木陰で休憩を始めました。
ちょっと走っただけでこれです。
サッカーを長時間やるのは到底無理なようでした。

茉莉「ごめんね、お姉ちゃん……」
信恵「ううん、いいよ。 あたしこそサッカーやろうなんて言ってゴメン」
千佳「茉莉ちゃん大丈夫?」
茉莉「う、うん……今はもう平気…」
雅博「しばらくここで休んでたほうがいいかもね」
信恵「うん、じゃああたしは茉莉ちゃん看てるからあんたたち適当に遊んでてくれ」
雅博「あ、うん、了解〜」

雅博と千佳と美羽は、何かして遊ぶことにしました。
アナちゃんは茉莉ちゃんに付き添ってあげています。

千佳「じゃあ何して遊ぶ?」
雅博「う〜ん、そうだね……鬼ごっことかは?」
美羽「鬼ごっこ? 子供じゃないんだからさ〜」
雅博「…美羽ちゃんまだ子供でしょ…」
美羽「あ〜! あたしを子供扱いしたな〜!!」
千佳「はいはい、分かったから何やるか決めてよ」
美羽「じゃあ帰ってゲームしようぜ? 外は暑いし」
千佳「はぁ…?」

千佳は呆気にとられていました。
まだ来たばかりだというのに暑いからもう帰りたいと言うのです。
確かに暑さは凄いものでした。
まだ6月だというのに真夏の日差しが照りつけています。
そして……

信恵「ん? もう帰るだって?」
千佳「うん、みっちゃんが帰ってゲームしたいって…」
信恵「そっか…茉莉ちゃんも部屋でゆっくり休ませてあげた方がいいし、帰るか」
千佳「うん、そだね」

そして6人は夏の公園を後にしました。
戻ってきたのはやっぱり千佳の部屋です。

美羽「うぁ〜……やっぱクーラーの効いたちぃちゃんの部屋が一番いいや」
千佳「あんたの部屋にもクーラーあるでしょ…」
美羽「いや、だってちぃちゃんちだと電気代タダじゃん?」
千佳「……そういうとこはしっかりしてるんだから…」
信恵「茉莉ちゃんは本当に運動苦手なんだね…」
茉莉「う、うん……走るのと泳ぐのと球技は苦手なんだ……」
信恵「……要するに運動全部、ってことね…」
美羽「ん〜、何か心配だな〜」
千佳「え、何が?」
美羽「これから先茉莉ちゃんは生きていけるのかな〜?」
雅博「いや、別に大丈夫でしょ…」
美羽「運動は全然ダメだし何しろドジだから…」

美羽の一言で全員が一斉に茉莉ちゃんの方を向きました。
言われて見れば茉莉ちゃんのドジっぷりは日本、いや、世界でもトップクラスです。
それを知っているみんなは急に将来のことが心配になってきたのです。
そのみんなの視線に、茉莉ちゃんはおどおどしてしまいました。

茉莉「あ、あの…えと……」
美羽「よし、今から茉莉ちゃんのドジを治す会を発足する!」
千佳「…またそういうの……」
雅博「ドジを治すって…具体的に何やるの?」
美羽「ん〜、そうだな〜、やっぱり俊敏さを鍛えるべきだよ。 だからトランプのスピードやろうぜ!」
信恵「結局、行き着く先はトランプなんだな…」

美羽は本気かどうかわかりません。
茉莉ちゃんのドジっぷりを治すことが出来るとは誰も思っていませんでした。
トランプを用意し、美羽と茉莉ちゃんはゲームを開始しました。
その様子を見守る4人。
けれども、結果は目に見えていました。
雅博はそんな彼女たちを夏の日差しのように温かい目で見守っていました…。


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