癒しの時間


美羽「やったー! 勝った勝った〜!」
茉莉「うぅ〜……負けちゃった…」

結果は誰の目にも明らかでした。
圧倒的な差で、茉莉ちゃんが負けてしまったのです。
スピードはその名の通りスピードが要求されるゲーム。
茉莉ちゃんには余りにも不利なゲームだったのです。

美羽「やっぱ茉莉ちゃんは弱いな〜。 これじゃあドジは治らないよ?」
茉莉「う〜……」
信恵「こんなことで治るわけ無いだろ」
雅博「うん、僕もそう思う」
千佳「私も」
アナ「私もですわ」
美羽「なんだよ〜、みんなして。 茉莉ちゃんのドジを治さなくてもいいのか?」
信恵「う〜ん、茉莉ちゃんはやっぱり多少ドジな方が茉莉ちゃんらしいし」
千佳「そだね、今のままでもいいと思うよ」
雅博「確かにそれが茉莉ちゃんの個性でもあるしね」
美羽「何だよ〜。 茉莉ちゃん、あんなこと言われてるけどいいのか?」
茉莉「えっ…? わ、私は別に……」
信恵「ほら、茉莉ちゃんだっていいって言ってるし」
美羽「ちぇっ、つまんないの〜」
信恵「つまんないってお前…」

美羽はさも残念そうに口を尖らせていました。
茉莉ちゃんのドジを治す会もこれにて解散したようです。
と、信姉が笑いながら言いました。

信恵「あたしは茉莉ちゃんのドジを治すより美羽のバカを治す方が先だと思う」
美羽「はっ!?」
信恵「だってそうだろ、毎日のようにみんなに迷惑かけてるし」
美羽「そんな……あたしたちはその程度の仲だったの…?」
信恵「そういう問題じゃないだろ。 んでみんなはどう思う?」
千佳「ん〜、そうだね、みっちゃんはもうちょっと大人しくなればいいかもね」
アナ「ちょっとうるさいですわよね」
雅博「少し黙っててくれるといいんだけどね」
美羽「お兄ちゃんまでそんなこと……ひどい…ひどすぎるわ……」

美羽は悲劇のヒロインを気取り、ハンカチを噛んで泣いています。

信恵「じゃあどうやって治そうか?」
美羽「こるぁ〜!! 勝手に話を進めるな〜!!」
信恵「そんな巻き舌で言わんでも」
雅博「まあ無理に治さなくても美羽ちゃんがちょっと気をつけてくれればいいんだよね」
千佳「うん、そうだよね。 みっちゃんが気をつければ済むことだよ」
アナ「そうですわね。 美羽さんの努力次第ということですわね」
茉莉「うん」
美羽「結局あたしが悪いんじゃんかよー。 もういいも〜んだ」

美羽はそう言うと押入れの中に入ってしまいました。
そして残された5人には、平和が訪れたました。

信恵「これで静かになったな」
千佳「うん、いつまで続くかだけど」
雅博「結果的にはOKって感じだね」
茉莉「でもなんか違うような気もするけど…」
アナ「そうですわね、すぐそこに美羽さんがいるわけですし…」

みんな美羽がいなくなったことについて話しています。
でもいつものことです。
美羽も飽きてすぐに出てくることでしょう。
それはみんな分かっていたのです。


 と、丁度その時、外から犬の鳴く声が聞こえてきました。

信恵「お、さたけが鳴いてるみたいだな」
千佳「あ〜、じゃあ私ちょっと連れてくる〜」

そう言うと千佳は部屋を出て行きました。
さたけとは、千佳の家で飼っている柴犬です。
世話は主に千佳がしています。
雅博はさたけど何度か遊んだことがありました。

千佳「連れてきたよ〜」
さたけ「ワンワン!!」
雅博「お〜、さたけ、久しぶり〜」
さたけ「ワン!!」
千佳「もうすっかりお兄ちゃんに慣れたみたいだね〜」
アナ「お兄さまはイヌお好きなんですか?」
雅博「うん、動物はみんな好きだよ」
アナ「そうなんですの!? 私もフルシアンテと言う犬を飼ってるんですよ」
雅博「あ、そうなの?」
アナ「はい。 とっても大きな犬なんですよ」
千佳「そっか、お兄ちゃんまだフルちゃん見たこと無いんだね」
雅博「うん。 そっか〜、アナちゃんちも犬飼ってたんだ〜」
千佳「それで茉莉ちゃんはフェレットを飼ってるんだよ」
雅博「フェレット!? へぇ〜、そうだったんだ〜、知らなかったなぁ〜」
茉莉「うん、ジョンって言う名前なんだよ」

雅博は関心しっぱなしでした。
茉莉ちゃんとアナちゃんがペットを飼っていたというのは初耳です。
今まで何度も一緒に遊んでいましたが、そういう話題は上りませんでした。
雅博はまたひとつ、彼女たちに近づけたように思えました。

茉莉「じゃあ今度連れてくるね」
アナ「私も今度家にいらした時に是非見て行ってください」
雅博「うん、楽しみにしてるよ」

雅博には楽しみが増えました。
動物好きな雅博にとって動物との出会いは本当に嬉しいものです。
それに動物を通じて女の子たちとより仲を深められるチャンスでもあります。
雅博は何だかうきうきしてきました。

雅博「僕も実家ではネコ飼ってるんだ」
千佳「そうなんだ〜、ネコか〜」
アナ「ネコですか、見てみたいですわ〜」
茉莉「私も〜」
千佳「私も見たいなぁ〜」
信恵「あたしはむしろ抱きたいな」
千佳「お姉ちゃん見かけによらずネコ好きだもんね〜」
信恵「見かけによらずは余計だ…」
雅博「そっか〜、じゃあ今度写真持ってくるよ」

雅博はみんなと約束をしました。
ペットは人を優しくするというのは本当のようです。
みんなの顔は自然と笑顔になっていました。
ただ一人を除いて……

美羽「ちょっと〜! いつまでやらせんだよ〜!!」
千佳「あれ? みっちゃんいたの?」
美羽「ひど!!」

押入れから勢い良く出てきた美羽。
疎外感を感じて、また悲劇のヒロインを演じています。
そんな美羽の姿を、雅博は笑って見ていました。
水無月の太陽は、いつまでも雅博の心を照らしていました…。


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