クッキーの甘さと


信恵「へぇ〜、アナちゃんってイギリスから来たんだ〜」
アナ「はい」
雅博「イギリスのどこ?」
アナ「コーンウォールと言うところですわ」
美羽「コーンうぉーる……なんか美味そうだなぁ…」
千佳「みっちゃん何想像してるの……」
信恵「そこってどういう所?」
アナ「すごくキレイで自然が多くていい所ですわ」
千佳「へぇ〜、行ってみたいな〜」
アナ「はい、是非一度訪れてみてください」

みんなアナちゃんのことがすごく興味あるようです。
みんなの視線が、アナちゃんに集まっているのが分かります。

信恵「でもアナちゃんってイギリスから来たのに日本語うまいよね」
アナ「そ、それは……お、お勉強をいたしましたので…」
美羽「でも英語を話せないのはなんで?」
アナ「えっ…!? そ…そんなことありませんわ…」
美羽「じゃあ何か英語で喋ってよ〜」
千佳「ちょっとみっちゃん……」
アナ「い、いいですわ……えと……ないすとぅーみーちゅー…あいあむ…あな…」
美羽「……なんだそれ」
アナ「じ、自己紹介ですわ…」
信恵「えと…アナちゃん…? もしかしてそれしか話せない…とか?」
アナ「え…!? そ…それは……」

アナちゃんは動揺しているようです。

千佳「お姉ちゃんも、もういいでしょ? アナちゃんかわいそうだよ…」
信恵「そういうつもりじゃなかったんだが…。 ゴメンね、アナちゃん」
美羽「まあ英語が喋れないイギリス人もいるさ、気にするな」
千佳「いや…慰めになってないから……」

新しく友達になったアナちゃん。
雅博はそんなかわいい友達がまた一人増えて胸が一杯になっているのでした。
そしてその後はアナちゃんのことを中心に楽しくお喋りをしました。
それからおよそ1時間後……。

信恵「あ、そうだ、ちぃ、お菓子作ってよ」
千佳「きゅ、急だな……まーいいけど…」
雅博「千佳ちゃんお菓子作れるの?」
千佳「うん。 特にクッキーが得意なんだ〜」
信恵「ちぃはお菓子作りしか取り柄が無いもんな」
千佳「おい…」
美羽「あ、ちぃちゃんの取り柄他にもあるよ」
信恵「ん、何だ?」
美羽「宿題見せてくれる」
千佳「いや、それは取り柄じゃねぇだろ…」
雅博「宿題は自分でやるもんだよ、美羽ちゃん」
茉莉「そうだよ、美羽ちゃん…。 自分のためにならないもん」
アナ「そうですわ。 宿題は自分でやってこと意味があるのですよ」
美羽「なんだよ〜…みんなしてあたしをいじめんなよ〜」
千佳「だったら自分で宿題やってね」
美羽「……考えとく」

一方的に攻められた美羽は、ばつが悪そうにちょっと反省したようです。
やっぱり宿題は自分でやらなきゃ意味が無いのです。
そのことを少しは美羽も理解したようでした。

千佳「じゃあ作るのはクッキーでいい?」
信恵「おう」
千佳「じゃちょっと作ってくるね」
雅博「あ、僕も手伝うよ」
千佳「お、お兄ちゃんはみんなと遊んでていいよ」
雅博「いいよいいよ、僕にも手伝わせて」

雅博はそう言って無理矢理千佳についていきました。
そして部屋を出て階段を下りてゆきます。

千佳「ほんとにみんなと一緒にいていいよ」
雅博「ううん。 千佳ちゃんがクッキー作ってるとこ見てたいんだ」
千佳「……もう、お兄ちゃんってば」
雅博「へへ」

キッチンへ来ると、千佳はエプロンを着け、早速材料や調理器具を並べていきました。

千佳「お兄ちゃんはそこに座っててね」
雅博「うん」

そう言われて、雅博はキッチンテーブルに腰をかけました。
なんとも手際のよい千佳。
その手際のよい手つきは、作り慣れていることを物語っていました。
その様子をイスに座って眺める雅博。
こうして見ると、まるで料理をしている新妻のような感じです。
新妻というにはちょっと幼いですが、その手際の良さは本物のお嫁さん顔負けです。
雅博は、いつしかそんな彼女の真剣な姿に見とれてしまっていました。
そして、千佳が後ろを向いた時を見計らって、後ろから抱きついたのです。

千佳「ひゃっ! ちょ、ちょっとお兄ちゃん…!?」
雅博「千佳ちゃんかわいい〜」
千佳「だ、ダメだよ…今クッキー作ってるんだから……」
雅博「ゴメンね……千佳ちゃんが真剣なのを見たら我慢できなくて…」
千佳「誰か来たらどうするの…?」
雅博「大丈夫だよ。 みんな上にいるから」
千佳「ちょっとホントにやめて……これじゃあ作れないから」
雅博「……分かった…ゴメン…」

雅博はしぶしぶイスに座りなおしました。
千佳は『もう、しょうがないな〜』と言ったような顔で雅博を見ると、また作業を始めました。
雅博はなんだかちょっと心寂しい気持ちになりました。
その後は雅博も大人しくなりました。
そして千佳も一通り作業が終わり、あと焼けるのを待つだけになりました。
千佳は雅博の向かいに座って休憩しました。

千佳「ふぅ〜。 これであと焼くだけだよ」
雅博「お疲れさま」

そう言って千佳と雅博は微笑みあいました。
そして千佳はコップに水を汲み、一気に飲み干しました。

千佳「ふはー! …ねえお兄ちゃん、みんなの前でさっきみたいなことしないでよ?」

千佳は恥ずかしそうに上目遣いで言いました。
雅博もその辺は分かっています。
さっきは衝動でやってしまったのです。

雅博「うん。 ゴメンね、さっきは。 千佳ちゃんがあまりにもかわいかったから…」
千佳「うん、いいよ…」
雅博「久しぶりに会ったから我慢できなくて…」
千佳「もう…お兄ちゃんってば……」
雅博「千佳ちゃんと2人きりになりたかったんだ…」
千佳「……私も…。 でもさっきのはいきなりだもん。 ちょっとびっくりしちゃった…」
雅博「うん…反省してます……」
千佳「ねえお兄ちゃん……目つぶってくれる?」
雅博「え? …こ、こう?」
千佳「うん。 ……まだ開けないでよ?」
雅博「う…うん……」

言われたとおり、目を閉じる雅博。
視界から千佳が消え、真っ暗闇の一時。
雅博の唇に、千佳の柔らかな唇が重なりました。
刹那、目を開ける雅博。
目の前には、目をつぶった千佳の顔がありました。
千佳はクッキーの生地の味見をしたのか、唇はほんのり甘い味がしました。
長いキスの間、キッチンにはクッキーの甘い香りが漂っていました。


      前へ  一覧  次へ

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送