アナとの出会い


 その後、2人は静かな時を過ごしていました。
2人とも胸のドキドキは、お互いに共有していました。

雅博「千佳ちゃん……僕のことって…どんな風に思ってたの…?」
千佳「え…お兄ちゃんのこと…? …最初は別にどうも思ってなかったけど…」
雅博「そ…そうなんだ……」
千佳「あ…でも何回か会ううちにお兄ちゃんって優しいんだな〜って思うようになったんだよ」
雅博「え…本当?」
千佳「うん、ホントだよ。 お勉強教えてくれるしいつでも優しく接してくれるし…」
雅博「そっか……僕…ずっと心配だったんだ……。 千佳ちゃんに嫌われてるんじゃないかって…」
千佳「え……どうして?」
雅博「だって……美羽ちゃんの言うとおり…アキバ系だし…ロリコンだし…」
千佳「そんなの全然気にしてないよ。 だってお兄ちゃんはお兄ちゃんだもん…」
雅博「…うぅ……千佳ちゃん……」

千佳は本当に気にしていないようでした。
そんな千佳に、雅博は胸が一杯になって涙ぐんでくるのでした。

雅博「…ありがとう……そして……これからもよろしくね」
千佳「……うん…」

そして口づけ…。
軽い唇と唇の触れ合いは、お互いの気持ちを交換するかのように温かでした。
ちょっとアゴを上向きに、そして目を閉じてキスをする千佳。
ちょっと顔を傾けて、そして優しくキスをする雅博。
二人のシルエットが、カーテン越しの淡い雨光に映し出されていました。


雅博「じゃあ……土曜日にまた来るね」
千佳「うん…。 じゃあいつでもメールちょうだいね」
雅博「うん、毎日メールするよ」
千佳「ホント? 楽しみだな〜。 あ、そうそう……このこと…みっちゃんたちにはナイショね」
雅博「うん、2人だけの秘密だもんね」
千佳「そだね…2人だけのヒミツ…。 じゃあまた土曜日ね」
雅博「はいは〜い。 じゃあまたね〜」

そう言って雅博は伊藤家を後にしました。
五時をまわり、雨ということもあってかもうすっかり辺りは暗くなっていました。
傘に零れる雨粒の音が、何とも心地よい。
いつの間にか大きくなっていた水たまりが、雅博の姿をほんのりと映し出していました。
雅博は立ち止まって暫し自分の姿を眺めていました。


 それから雅博は、毎日千佳とメールをしていました。
学校での話や美羽の悪行など他愛も無い話題。
そんなメール一つ一つが、雅博の宝物になっているのでした。
年齢が10歳も違うので世代の違いを感じる時もありました。
けれども、そのジェネレーションギャップも雅博は楽しんでいたのでした。
そして土曜日……

千佳「あ! お兄ちゃん! いらっしゃ〜い」
雅博「久しぶりだね〜」

5日ぶりの再開を果たす千佳と雅博。
付き合って5日目…。
まだ実感が持てない雅博でした。

美羽「おっ、お兄ちゃんだ!」
信恵「よう!」
雅博「あ、2人とも久しぶり〜」

千佳の部屋には既に信恵と美羽が来ていました。

千佳「お兄ちゃん、今日は茉莉ちゃんがアナちゃんを連れてくるんだ」
雅博「アナちゃん…?」
千佳「うん。 茉莉ちゃんのクラスに転入してきた外国人の女の子なんだ〜」
雅博「へぇ〜、そうなんだ」
美羽「外国人のくせに英語が話せないんだよ〜」
千佳「みっちゃん…それは秘密だって言われたでしょ…」
美羽「そだっけ?」
信恵「あたしも会うの初めてだから楽しみなんだよな」
雅博「そっか…なんか僕も楽しみだな〜」
美羽「やっぱりロリコンだよね、お兄ちゃんは」
雅博「……もう否定するのも面倒だよ…」

4人でわいわいやっていると、インターホンが鳴りました。

千佳「あ、茉莉ちゃんだ!」

千佳が迎えに行くと、すぐに茉莉ちゃんを連れて戻ってきました。
そしてもう一人、先ほど話題に上がっていた外国人の女の子がいました。

千佳「みんな〜、茉莉ちゃんとアナちゃん来たよ〜」
美羽「よう!」
茉莉「お邪魔します」
アナ「おじゃまします」
千佳「えと…じゃあ紹介するね。 この子が茉莉ちゃんと同じクラスのアナちゃん」
アナ「あ、初めまして、アナと言います。 よろしくおねがいします」

その女の子は、金髪で青い瞳、何ともキレイな白い肌の本当に可愛らしい子でした。

信恵「…………これあたしの!」
アナ「えっ……えっ?」
千佳「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!?」
信恵「だってすごくかわいいんだもん」
美羽「お姉ちゃん…目の色変わったね」
雅博「う〜ん、確かにすごくかわいいよね」
千佳「うん、そうだよね。 私も一目見た時かわいくてびっくりしたもん」
茉莉「私も〜。 クラスに初めて来た時お人形さんみたいだったもん」
アナ「そ、そんなことないですよ…」
千佳「あ、それでこの男の人は近所に住む大学生のお兄ちゃん」
アナ「あ…初めまして。 アナと申します」
雅博「僕は大山雅博、浜松の大学に通う大学生。 よろしくね」
千佳「そしてこれが私のお姉ちゃんで高校生だよ。 さっきはゴメンね、いきなり…」
アナ「いえ…。 初めまして、アナです」
信恵「初めまして。 あたし伊藤信恵。 お姉ちゃんって呼んでいいからね」
アナ「はい、これからよろしくお願いします」

一通り自己紹介が終わりました。
アナちゃんは言葉の訛りも無く、どうやら日本で育てられたようです。
言葉遣いも丁寧で、育ちのいいお嬢様のような雰囲気を感じました。
雅博は、そんなアナちゃんにちょっと心を奪われていました。
千佳にはナイショです。
雅博はそんな心持ちの中、カーテンに覗く木洩れ日を見つめていました。


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