出会いの季節


 やってきたのは雅博のアパートから程近い住宅街でした。
閑静な住宅街という印象の静かなところ。
その中の2階建ての綺麗なお家です。

美羽「ここだここだ」
雅博「へぇ〜、綺麗な家だね。 ここ美羽ちゃんのお家?」
美羽「うん」
千佳「いや嘘つけ! ここは私の家だよ」
雅博「あ、そうなんだ」

3人は千佳の家にあがり込みました。
内装も綺麗で、アロマオイルのいい香が漂ってきます。
そして雅博2階に上がると、『千佳の部屋』と札の掛かった部屋へと通されました。

美羽「どうぞゆっくりくつろいでやってください」
千佳「あんたの部屋じゃないでしょ…」
雅博「ここ千佳ちゃんのお部屋? へぇ〜、かわいい部屋だね」
美羽「あんたはそれしか言うことないのか」
雅博「あ、いや……」
千佳「よいしょっと…ちょっと待ってて。 私飲み物持ってくるよ」

千佳は荷物を降ろすと部屋を出て行きました。
雅博は適当に腰を下ろしました。
今は美羽と雅博の二人きり。
静かな空気が流れています。
雅博が、軽く溜息をつきました。
美羽はその雅博をずっと見つめています。
その様子に雅博はちょっと動揺してしまいました。

雅博「な、何?」
美羽「……変なことしたら警察呼ぶからね」
雅博「し、しないってば!」
美羽「………」
雅博「…………そ、そんなに見つめないでよ…」
美羽「ロバ」
雅博「は?」
美羽「あんたのあだ名、ロバね」
雅博「な、なんでよ…?」
美羽「顔がロバに似てるから…」
雅博「そ…それはやめてくれ……」
美羽「じゃああんたは何て呼んで欲しい?」
雅博「え…? そうだね〜……お兄ちゃん、とか」
美羽「……ロリコン」
雅博「うう…どうしてそうなるの……」

雅博と美羽がそんなこんなのやりとりをしていると、千佳がオレンジジュースを持って戻ってきました。

千佳「おまたせー。 …あれ? どうしたの?」
美羽「ちぃちゃ〜ん…! この男があたしを襲おうとしたの!!」
雅博「え!? そ、そんなことしてないってば!!」
美羽「ウソ……あたしの服脱がしたじゃん…」
千佳「お前が嘘ついてるんだろ」
雅博「そうだよ、僕はそんなことしてないよ」
千佳「うん、分かってるよ。 みっちゃんの言うことの半分は嘘だもん」
雅博「あ、そうなんだ…」
美羽「おい! あたしはそんなに嘘つきじゃないぞ。 4割だ、4割」

3人はすっかり仲良しになったようです。
雅博も、小学生の女の子と仲良くなれてとても嬉しそうです。
その後も、美羽のボケに翻弄されながらも雅博は楽しい時を過ごしたのでした。


 そして暫くすると誰かが帰って来たようです。

千佳「あ、お姉ちゃん帰って来た!」
美羽「よし、じゃああたしはこいつを見張ってるからちぃちゃん呼んで来て」
雅博「見張ってるって……逃げたりしないって…」
美羽「……」
雅博「………」

美羽と雅博のにらみ合いがまた始まりました。
一触即発のそんな時、千佳がお姉ちゃんを連れて戻ってきました。

姉「…これが千佳の言ってた男か」
雅博「あ、どうも…」
姉「中の上、ってとこか」
雅博「え!? な、何それ…?」
美羽「お姉ちゃんもそう思うか? あたしもそんなとこだな」
雅博「ちょ、ちょっと……人を勝手に評価するのやめてくれないかな…」
姉「まあそんなことより自己紹介してくれよ」
雅博「あ、そうだね。 僕は静文大の大学生の大山雅博です」
信恵「私は千佳の姉の信恵。 これでも一応女子高生だ」
雅博「よろしくね」
信恵「ああ、よろしく。 ……一つ聞いていいか?」
雅博「え、うん、いいよ」
信恵「何でうちにいるんだ?」
雅博「えっ? …そ、それは…千佳ちゃんと美羽ちゃんが無理矢理連れてきて…」
信恵「そうなのか?」
美羽「違うよ、こいつがあたしたちの家教えろって言ってきてそれで…」
千佳「みっちゃんは黙ってて。 まあ成り行きというか何と言うか」
信恵「まあなんとなく分かった。 ところであんたは家はこの近くなのか?」
雅博「うん、歩いて10分くらいかな」
信恵「そうか…。 まあ何もない家だがゆっくりしていくがいい」
雅博「あ、うん、ありがとう…」

信恵はそう言うと部屋を出て行きました。
どうやら容認されたようです。

千佳「よかったね、お姉ちゃんに認められたよ」
雅博「うん……なんか怖そうなお姉ちゃんだね…」
美羽「まあ実際に怖いんだが…」
千佳「そんなことないでしょ。 まあ見た目はちょっと悪そうだけど根は優しいから」
美羽「あたしにはいつも冷たいけどね」
雅博「そうなんだ…。 でも認めてもらえて良かったよ」
千佳「なんか急展開だったけどまあこれからよろしくね」
雅博「あ、こちらこそよろしく」
美羽「小学生に手を出したら犯罪だからな」
雅博「だからそんなことしないって…!」

無事に信恵に認められた雅博。
今まで淋しい生活を送っていた雅博にとって、今目の前の現実は夢のようです。
春のうららかな昼下がり。
浜松の町に、一つの出会いの花が咲いたのでした。


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