プロローグ


 静岡県の西部、浜名湖を臨む商業都市、浜松。
これはそんな街のゆる〜い物語。
浜松駅近くの大学に通う一人の大学生。
名は大山雅博、21歳。
1年浪人して現在大学3年生。
大学から少し離れた蜆塚という地で一人暮らしをしています。
この日、大学の履修ガイダンスへ出席した帰り道。
雅博は自分のアパートへ向かって歩いていました。
すると、向こうから小学生の女の子二人が歩いて来ました。
一人はショートでちょこんと結んだ髪がかわいい子。
そしてもう一人は茶色髪のツインテールの女の子。
何やら楽しげに話しをしながら歩いてきます。
小学生たちも始業式が終わった帰り道のようです。
と、雅博に気付いた茶色髪の女の子は、その場でぴったりと止まりました。
ショートの子は、どうしたのかと思っているようです。
一方雅博は先のガイダンスで配られた講義細目を眺めながら歩いています。
なので女の子たちには気付いていません。
そして雅博は、女の子にぶつかっていきました。

雅博「うわっ!!」
茶色髪の女の子「きゃっ!!」

その場で二人とも倒れてしまいました。

雅博「あ、ご、ごめんなさい……」

そして慌てて謝る雅博。

茶色髪の女の子「いったぁ〜……」

女の子はさも痛そうに腰をさすっています。

雅博「ご、ごめん……大丈夫?」
茶色髪の女の子「ゴメンで済めば警察はいらん」
ショートの女の子「ちょ、ちょっとみっちゃん…やめなよ…」
茶色髪の女の子「いやだってコイツがぶつかってきたんだもん…」
ショートの女の子「あんたが止まってるからでしょ…」
雅博「ほ、ホントにゴメン…。僕が前見て歩いてなかったからいけないんだ」

雅博は女の子たちに謝りました。

雅博「本当に大丈夫?」
茶色髪の女の子「いや…ダメかもしれない…」
雅博「え!? じ、じゃあ僕の家近くだから手当てしようか?」

雅博は女の子のことを本当に心配しているようです。
でも女の子たちはちょっと怪訝な様子です。
見ず知らずの人について行くというのは危険だと思ったのです。

ショートの女の子「ねぇ、みっちゃん、どうする?」
茶色髪の女の子「家に連れ込まれて何されるかわからんからな…」
雅博「だ、大丈夫だよ、そんなことしないよ…」

女の子たちは雅博が悪い人ではなさそうだと思いました。
実際、茶色髪の女の子もちょっと腰を打って痛くなっていました。
そして女の子たちは結局、雅博についていくことにしたのでした。

雅博「あ、ところでまだ名前を聞いてなかったね」
茶色髪の女の子「家に連れ込む上に名前まで聞くのか?」
雅博「へ、変な言い方しないでよ…」
茶色髪の女の子「あたしはみっちゃんだよ」
ショートの女の子「それ、あだ名だろ…。 この子は松岡美羽、私は伊藤千佳だよ」
雅博「僕は大山雅博、大学生だよ」
美羽「おお、大学生のロリコンか〜」
雅博「いやロリコンって勝手に決め付けないでよ…」

3人は色々話をしていると、雅博の住んでいるアパートへと到着しました。

雅博「ここだよ」
美羽「なんだ、随分いい所に住んでるんじゃんか」
千佳「そうだね。 大学生ってもっとボロアパートに住んでるもんかと思ってた」
雅博「それは昭和の大学生だよ(笑)」

そして女の子たちも部屋へあがり込みました。

美羽「中も結構綺麗にしてるんだな」
千佳「うん。 なんかちょっと意外かも」
雅博「掃除は好きでよくやってるからね」

雅博はちょっと自慢げな顔をしています。
すると、美羽が何かを見つけて言いました。

美羽「あっ! これは何だ!?」
千佳「これって…美少女フィギュアってやつだよね…」
雅博「あ! ヤベっ!!」

雅博はそのフィギュアを隠そうと思いましたがもう遅かったのです。
美卯と千佳の雅博を見る目は、明らかに変わっていました。

美羽「あんた…アキバ系だったんだ」
千佳「うん。 これもちょっと意外……でもないか」
雅博「そ、それは言わないでくれよ…」

雅博は今にも泣き出しそうです。
小学生の女の子たちに2次元美少女が好きだと思われるのはとても恥ずかしいことでした。
自分と同い年くらいの女の子であればあからさまな嫌悪感を抱かれるかもしれません。
でもそれはそれでいいのです。
あからさまな反応をしてくれた方が気が楽なのです。
小学生くらいの女の子の反応は、ちょっと同情するような、そんな目で見てくるのです。
それが余計に恥ずかしさを煽る結果となるのでした。

美羽「そうか〜、アキバ系なんだ〜。 アキバ系って引くよね〜」
千佳「み、みっちゃん、やめなよ…」
雅博「うう……」
千佳「気にすることないよ…。 好きなものは人によって違うんだし…」
雅博「うん、ありがとう…千佳ちゃん…」
美羽「ロリコンの上にアキバ系ときたか…。 こりゃ救いようが無いな」
千佳「もうみっちゃん、そういうこと言うのよくないよ」
雅博「反論できない自分が悲しい…」

すっかり小さくなってしまった雅博。
小学生の女の子の前で顔が上がらない情けなさを感じています。
でも女の子たちはどれほど気にしていないようです。

美羽「まああんたは悪い奴じゃなさそうだし。 少しくらいなら相手してやってもいいよ」
雅博「え…?」
美羽「どうせ友達もいないんだろ? あたしたちが友達になってやるよ」
千佳「え…たち…? …まあ私は別に構わないけど…」
雅博「え、ほ、本当?」
美羽「6割方本当だ」
雅博「6割…? でも嬉しいよ」
美羽「それじゃあ早速みんなに顔合わせに行くか」
千佳「え? みんなに会わせに行くの?」
美羽「あたぼうよ。 お姉ちゃんに気に入られなきゃ友達にはなれん」
千佳「う〜ん、まあ確かにそうかも…」
美羽「ということだ、それじゃあ行くか」
雅博「え、え? 行くってどこへ? 体はもう大丈夫なの?」
美羽「そんなもんはとうの昔に治ってる」
千佳「私の家に行くんだよ。 多分お姉ちゃん帰ってると思うから」
雅博「そ、そうなんだ…」
美羽「よし、それじゃあ行くか」

3人は忙しなくアパートを出て行きました。
こうして雅博のゆる〜い物語が始まるのでした…。


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