ゆるやかな夕刻


 それから間もなくのことです。
信恵も加わって4人で色々話をしていた時。
家のチャイムが鳴りました。

千佳「あ、茉莉ちゃんだ! 私行ってくる」
雅博「茉莉ちゃん?」
信恵「ああ、近くに住むかわいいコだ」
雅博「へぇー、そうなんだ」
美羽「お、かわいいって聞いたら目の色が変わったぞ」
雅博「そ、そんなことないって…」
信恵「まあかわいいのは確かだからな」

と、そこに千佳が茉莉ちゃんを連れて戻ってきました。

千佳「茉莉ちゃん来たよ〜」
信恵「おお、待ってたよ」
茉莉「あ、お待たせしました…」

その茉莉ちゃんは本当に可愛らしい女の子でした。
メガネをかけてちょっと奥手なところが言動にも現れています。

千佳「それじゃあ紹介するね。 この子が桜木茉莉ちゃん、5年生だよ」
雅博「あ、どうも……」
茉莉「あ、え、えと…どうも……」
千佳「それでこの男の人は…」
美羽「ロリコンでアキバ系の大学生」
雅博「だから違うって…!」
茉莉「え…? ロリコン…? あきばけい……?」
雅博「ち、違うよ……僕は大学生の大山雅博。 よろしくね」
茉莉「あ…はい…よろしくおねがいします……」

こうして自己紹介は無事に(?)終わりました。
運命的な出会いで出逢った大学生の青年と少女たち。
不思議な運命を感じながらも少女たちは自然とその青年を受け入れてるのでした。

信恵「ところで雅博は彼女いるのか?」
雅博「え!? ……いないよ…」
美羽「やっぱりな〜、ロリコンでアキバ系じゃあねぇ」
雅博「だから違うってば…!」
信恵「なんだ? マジでアキバ系なのか?」
美羽「そうだよ。 だってこいつの部屋に美少女フィギュアが無数にあったもん」
雅博「そんなに無いよ、一つだけだよ…」
信恵「でもあるにはあるんだな?」
雅博「……はい」
茉莉「ねぇ、アキバ系ってなに?」
信恵「ああ、アキバ系ってのはアブナイ人のことを言うんだよ」
茉莉「え!? じゃあこの人……」
美羽「そうなんだ。 だからこいつは時あるごとにあたしを襲うんだよ」
千佳「はいはい、みっちゃんは黙ってて」
美羽「なんだよー、本当のことじゃんかよぅ」
千佳「だったら証拠見せてみろ」
美羽「う…うう……ちぃちゃんのいけず〜」

茉莉ちゃんも加わり、ますます賑やかになった少女たち。
静かな住宅街に黄色い声。
春の空気が、部屋の中に流れ込んで来ます。
夕刻近くまで楽しくおしゃべりをする少女たち。
ちょっと場違いに感じながらも雅博は楽しい時を過ごしたのでした。

信恵「さてと、そろそろ帰らなくていいのか?」
雅博「あ、そうだ……もうこんな時間か…」
美羽「おお、もうすっかり朝か…」
信恵「まあ別にうちは厳しくないから泊まりだっていつでもOKだけどな」
雅博「そうなんだ。 でも今日は帰るよ」
美羽「無視すんな。 …まあそうりゃそうだな。 出会って初日から夜這いかけられても困るもんな」
信恵「いやお前は帰れよ」
美羽「なんでよー、いいじゃんかよー。 明日は休みだろ?」
信恵「そういう問題じゃない。 お前がいると迷惑なんだ」
美羽「むぅ〜、お姉ちゃんひどいよ……。 ちぃちゃんも何か言ってやってよ」
千佳「帰れば? みっちゃん」
美羽「ひど! それが唯一無二の親友に言う言葉?」
千佳「いや、唯一無二なんかじゃないし」
雅博「はは、君たちは面白いね〜」
美羽「ロリコンは黙ってろ」
雅博「ひど!!」
信恵「まあまあ、茉莉ちゃんが困ってるじゃんか」
茉莉「みんな…けんかはよくないよ…」
千佳「あー、喧嘩してたわけじゃないんだけど…」
雅博「あ、うん、ごめんね、茉莉ちゃん…」
茉莉「あ…いえ……大丈夫です…」
信恵「さあ、仲直りしたところで今日はこれで解散な」
美羽「仕方ないな…。 今日は惜しまれながらもこれでおしまいか」
信恵「誰も惜しんでないっての」
雅博「うん。 それじゃあ僕はそろそろ…」
美羽「おい、お前今『うん』って言ったな…?」
信恵「おう。 また明日も来るか?」
雅博「あ、うん。 多分来るよ」
信恵「そうか。 じゃあまた明日な」
雅博「うん、じゃあまた明日…」

こうして雅博は千佳の家を後にしました。
こんなに賑やかなのは久しぶりです。
普段触れ合うことのない小さな女の子たちと楽しいひと時を過ごしたのでした。
日も傾き始め、辺りを茜色に染めようとしています。
ハクチョウゲの香り漂う、ゆるやかな夕方のことでした。


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