目の前で繰り広げられている光景に、僕は言葉が出なかった。
僕はその女の子にすっかり釘付けになってしまっていた。
多分、ケンちゃんも同じだと思う。
その女の子は、ついに上半身裸になっていた。
女の子の体……目に飛び込んできたその裸体は、僕に電撃の衝撃を与えるには充分だった。
胸がドキドキなるのが分る。
これでもかというぐらいに、脈拍が速くなっていた。
ケンちゃんも同じようで、背中越しにケンちゃんの鼓動が聞こえる。
未知なる世界に呆然としていると、また衝撃を受けた。
綺麗なその子の背中に、大きなあざのような黒いものがあったのだ。
その異質な物に、僕はまた違ったドキドキを覚えていた。
女の子の裸を見る衝撃と、その黒いあざのようなものを見た衝撃。
僕の中では、この二つの感覚が拮抗して、不思議な気分になっていた。
ケンちゃんは、その間も身動きひとつせず、ただ女の子を見ているだけだった。


女の子は、足元に置いてあったバッグの中から、タオルを出した。
ドキドキしながら僕はその様子を見守る。
その、小さく膨らんだ胸が、僕の脳裏に焼きつく。
僕の気持ちも知らずに、女の子は取り出したタオルを、清め場の水に浸していく。
びしょ濡れになったタオルを軽く絞り、そして、上半身をタオルでゴシゴシやり始めた。
ここを風呂場か何かと勘違いしているのだろうか…。
ドキドキしながら僕はそんなことを思った。
重点的に、黒いあざのような所をゴシゴシやっている。
その度にちらちらと見える小さく膨らんだ胸に、僕は視線を奪われていた。
ケンちゃんは、全く喋らない。
僕と同じように、すっかりその景色に見とれているんだと思う。
ゴシゴシやってはまた水に浸し、またゴシゴシやっては浸す。
その繰り返しで、その黒いあざのような所を何度もタオルで濡らして磨いていく。
清め場の下の石畳が濡れていく様子が、何だかいやらしく思えた。
未だ嘗て見たことの無い光景に、すっかり僕たちは虜になっていた。
しかし、そんな時だった……。
しゃがんだままでちょっと疲れてきた僕が体を起こそうとしたその時である。
近くに落ちていた小枝を僕は、バキッと踏んでしまったのである。
しまった、と思った時にはもう遅かった…。
 『だっ、誰!?』
ビクッとした女の子が、タオルで胸を隠しながらこっちを見た。
ヤバイ……でもここは木に隠れて向こうからは見えないはず。
隙を見てこの場を離れれば、ばれずに済むだろう、僕は思った。
でもあろうことか、ケンちゃんが頭を掻きながら何と木の陰から出てしまったのである。
 『見つかっちゃったか……見るつもりじゃなかったんだけどな…』
 『えっ……笹川君…!?』
女の子は驚いた顔をして、ケンちゃんを見る。
僕は身動きがとれず、その場で隠れたまま。
女の子の体はタオルに隠れて、もう見えなくなっていた…。

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