なつぐも。

 あの頃に戻りたい……願っても叶わない夢。
僕の子供の頃の思い出。
最後の夏休み……。


        ◇   ◇   ◇


ばあちゃんの家に来るのは、今年が最後になると母さんから聞いた。
夏休みの間、僕はばあちゃん家でお世話になっていた。
共働きの父さんと母さんに代わって、ばあちゃんが世話してくれる。
夏休みだけの、僕の家族。
じいちゃんとばあちゃんに、おばさん、いとこのケンちゃん、そして白い柴犬のシロ。
ケンちゃんは僕より2つ上のいとこで、いつも楽しい遊びを教えてくれる。
でも、もうここへ来るのは今年が最後。
僕が中学生になったら、夏休みでももう一人でいられるだろうと言うのだ。
最後の夏休みを、僕は思いっきり遊ぶことに決めていた。
そんなある日のこと。
僕たちは近くの神社へと来ていた。
遊ぶにはちょっと遠いけど、この日はなんとなく足を運んでいた。
神社の境内に入ると、けたたましいセミの合唱。
涼しいけど、日差しはやっぱり暑い。
僕は汗だくになりながら、ケンちゃんに着いて行った。
すると、神社の手を清める所に女の子が一人いた。
その子を見るなり、ケンちゃんは近くの木の陰に隠れた。
その様子に、僕は不思議に思いながら、ケンちゃんに聞いてみた。
 『何で隠れるの?』
 『あそこにいる女子、俺のクラスのやつなんだ』
同じクラスの女子に学校外で会うその気持ちは、僕もよく分かった。
僕も一緒にケンちゃんと木陰に隠れて、その時をやり過ごす。
その女の子にはまだ、僕たちのことはバレていないようだった。
しばらく、その女の子の様子を伺う僕たち。
でも何か様子がおかしい。
その清め場から離れず、辺りをキョロキョロしている。
僕たちは息を呑んでその女の子をじっと見つめていた。
そして……
その女の子は、いきなり、その場で服を脱ぎ始めた……。

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