橋男

 今日もこの川へとやって来た。
場違いにも思える大きな太鼓橋の架かるこの川へと。
今日もいる。
山伏風のあの男がこっちを見ている。
誰なんだ……あいつは…。
橋を渡ろうとすると「ここは渡らせないそ」と言っては邪魔をしてくる。
何のためにこんなことをしているのか。
山々に囲まれたこの辺鄙な土地に流れる川、その川に架かる橋。
これで三日目。
この男は何がしたいのだろうか。
誰が来るか、いつ来るかも分からないこの場所で。
俺は昨日と同じく男の前へと出てゆく。


その間にも男は俺を凝視してその目はここは通さんと頑なになっていた。
「おっと、ここから先へは通せんな」
一辺倒な男。
「あんた一体誰なんだ…こんなとこで……毎日何してるんだ?」
ぶっきらぼうに言う。
然し、男は黙ったまま俺を睨むのみ。
時間が経つに連れて、この男が益々奇怪に思えてくる。
川の水面(みなも)に映る男の姿が、ゆらゆらと歪んでいる。
風に流され男の手に持った錫杖が、シャリンと鳴った。

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