私は近くの森まで来ていた。
鬱蒼と茂る森は、昼間でも暗くてどこか怖さも感じる。
「ぼぅ」っと森の奥で大きな鳥が鳴いていた。
私は急いでバームフェルトの実を拾って帰ろうと森の奥へと入っていった。
辺りには魔物に引っかかれたような木がいくつもあった。
最近は魔物が多くなってきているそう。
何かこの世界に異変が起きているのだろうか。
木々のざわめきの中、私はバームフェルトの実探しに夢中になっていた。

 「こんなもんでいいかなっと」
私はかご一杯になった木の実を見て、体を起こした。
するとその私のすぐそばを、何かが動くのが見えた。
黒い塊、薄汚い艶の、黒い塊。
背筋がぞっとした私は、ゆっくりとその塊を見た。

 魔物だった。
名前は分からないけど、それは明らかに魔物だった。
その魔物は牙をむき、私に襲い掛かってきていた。
死を覚悟した…。
半狂乱になって叫ぶ私。
暗い森に溶けてゆく私の声。
…魔物の牙は、私には届かなかった…。
永い時間の暗闇から、私は目を覚ました。
と、そこには疾風の如く現れたシュレインさんがいた。
一撃で倒したのか、魔物は昇華してしまったようだった。
力が抜け、私はその場に泣き崩れた。
シュレインさんは、私の肩を抱き、やさしく立たせてくれた。
 「魔物は消えた。 でもこれはプロローグに過ぎないんだ」
私にはその時は、その意味が分からなかった。
闇の森を抜けると、黄昏のオレンジが眩しかった。
闇に輝く白魔術を、今日私は体感したのだった…。
何か変わりつつあるこの世界に一抹の不安を抱きながら…。

             

            前の頁  短編頭頁
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送