夏色少女
「せんせ〜、さようなら〜」
「おう、気をつけて帰れよ」
手を振り、とことこと廊下へ消えていく赤いランドセルが2つ。
夏休み前の多忙な俺を、束の間癒してくれる少女たち。
廊下に響き渡る黄色い声を尻目に、俺はテストの丸付けをしていた。
今日は特に暑い、死にそうだ。
窓を全開にしても、クールビズを慣行していても、夏の日差しだけはどうしょうもない。
カーテンで辛うじて日陰になた窓辺の机で、俺は団扇を仰ぎながら仕事をしていた。
アブラゼミの喧しい声は、暑さに拍車をかけていた。
今日も俺、教室で一人か…。
夏の孤独を自嘲しながら教室を見渡した。
すると、一人の少女と目が合った。
窓際の後ろから二番目の席、福原悠だ。
何をするわけでもなく、ただイスに座ってこっちを見ていた。
全然気づかなかった。
でももう下校時間である、今日は半日、もう授業も無い。
俺は帰るように促すことにした。
「福原、用が無いなら帰りなさい」
俺の言葉に、一瞬体が反応したが返事は無い。
俯いて、机の上をじっと見つめてしまった。
気になったが俺は仕事の続きをすることにした。
先生は私を見つけてびっくりした風だった。
ずっとここにいたのに、気づかなかったのかな。
どうせ私のことなんて、目に入ってないんだ…。
そう思うと何だか悔しかった…。
先生の鈍感さ、そして自分の魅力の無さに…。
そして私は意を決して立ち上がった…。
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