由紀子は、私に泣きついていた。
「あたしもうダメだよ……」
「どうしたの? 何があったか話してよ」
離れていった友達が、戻ってきたことに私はちょっと戸惑っていた。
けれども友達は友達、やっぱり私には由紀子は大切な友達だったのだ。
「あたし…彼のこと信じてたのに……赤ちゃん出来たの知ったら……」
「……逃げられちゃったんだ…」
「うん……どうしよあたし……もうダメだよ…こんなこと親にも言えないし…」
泣きつく彼女は、私の知る彼女ではなかった。
初めて見た彼女の一面に、私は今までのことを全て忘れようと思った。
彼女のためにも、自分のためにも。
「大丈夫だよ、由紀子。 私はいつも一緒だからね」
「亜美……ありがと…」
友情は色褪せることなんて無いんだ。
私は都合よく利用されてる、とは思わない。
だって泣きたい時には来てくれるのが、本当の友達だと思うから。
普段見せない弱い部分を見せられるのは、本当に信頼した相手だから。
「由紀子、勇気出して親に言ってみなよ。 なんなら私も一緒に行ってあげるから」
「……ありがとう亜美……。 あたし…今までずっと彼氏一筋だったのに……」
「何言ってるの、そのくらいで私達の友情が壊れるとでも思ってたの?」
「…亜美……ゴメンね…ホントに……ゴメンね……」
泣きつく彼女は、ずっと私の膝を占領していた。
気を許した本当の友達。
心はいつも、つながっていたことが私は嬉しかった。
大切な友達を、もう少しで私は失うところだった。
2人の気持ちのすれ違い、通じ合い、別離、同調。
愛情か、友情か、無理に選択することは無かったことを由紀子は悟った。
好きならそれでいいじゃん、それが私の答えだった。
そしてこの冬、由紀子は玉のような男の子を授かった。

             

            前の頁  短編頭頁
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送