彼女はちょっと決まりが悪そうに少し黙ってからこう言った。

「付き合うまでは出来ないけど……」

予想はしていた。
まともに話もしたことが無いこんなパッとしない僕に好意を抱いてる方がおかしな話だった。
それに友達からのウワサで僕が彼女のことを好きだということはバレていたと思う。
陰ながらいつも彼女の事を見ていたのもバレバレだったのかもしれない。
でも僕は後悔はしなかった。
自分の気持ちを、伝えられたことだけでもう十分だった。
それにまだ小学生、恋愛なんてこれからいくらでもできる、そう割り切っていた。
僕は彼女の気持ちを真摯に受け止め、彼女を置いてその場を後にした。
告白することがこんなにも気持ちいいものだと、春の桜が教えてくれた。
早咲きの桜が、踊り場の窓から僕を慰めてくれていた。
思ったよりはガッカリしなかった。
あ、これで僕の恋は終わったな、その程度だった。
桜に感謝しなきゃ。
その日の風は穏やかで、桜の花は舞い散ることなく凛と咲き誇っていた。
いつもの帰り道が、普段と違って見えた小学校最後の一日だった…。

 その後、中学に入ってからは好きな人は出来ることも無かった。
好きな人が出来ることに些か恐怖心を抱いていたことは否めない。
すっかり弱っていた僕だったけど、自分を変えようと勉強に励んだ。
そして中学も卒業し、高校に入って大学も行って、無事に就職することもできた。
長い、人生だった。

 その頃の思い出は、僕の大切な過去でもあり、今でもある。
今は本当に幸せなんだ、そう実感している。
だって今隣にいるのは、桜咲く季節に僕をフッた彼女なんだから…。

             

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