彼女には俺以外にも好きな人がいた。
俺と付き合う前から好きだったという陸上部のエースだ。
俺とはタイプは違うが、彼女はカッコかわいい系の男がタイプのようで、その他にも何人か好きな人がいたようである。
つまり、彼女は一人の人をとことん愛すというよりは、言い方は悪いが多くの愛を好んでいた。
俺にはその多くの愛は認められなかった。
付き合ってからも、彼女のその性格は変わることは無かった。
学校で一緒にいても、視線がそっちへ行っていることは俺には分かっていた。
その度に俺は、彼女を注意する。
注意、というか嫉妬心の趣くままに自分の気持ちを素直に伝えた。
彼女はそれを聞いて意外なことに嬉しがっていた。
嫉妬してくれるということは、それだけ自分のことを思ってくれてるということ。
けれども、それは長くは続かなかった。
いくら思ってるとはいえ、毎度注意されれば誰でも嫌になってくるというもの。
それでも彼女のその蠱惑の視線は止むことはなかった。
そして、それが原因で俺たちの仲は次第に悪化の一途を辿って行った。
そんな中、高校も卒業式を迎え、ついに俺たちは離れ離れになった…。

別々の大学へ行くようになり、彼女は一流大学で楽しそうに過ごす毎日。
俺は三流大学で友達もできずに独り寂しい毎日。
この対照的な境遇は、俺には耐えられなかった。
入学当初は高校の時の余韻から電話やメールもしていたこともあった。
なんとかつなぎ止められていた二人の絆が、嬉しかった。
そして今はもう…全く音沙汰は無い。
最後に会ったのは三年前の夏…暑い夏だった。
それから三年、俺は来春就職する…。

             

            前の頁  短編頭頁
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送