オレは孤独だった…。
大学生になってからというもの、毎日一人の生活が始まった。
一人暮らしをして、大学でもいつも一人で、本当に一人の孤独だった。
人付き合いが苦手なオレにとって、大学生活というものは苦痛以外の何でもなかった。
そしてオレの心は、次第に道を失っていった…。

 就職活動を始めた3年の頃には、ぼんやりとした不安が益々大きくなってきた。
自分のしたいこと、自分のあるべき姿、それが見えて来ず、悶々とする日々。
無駄に毎日を過ごすことが、苦痛で仕方なかった。
親の目があることも、オレにとっては重荷となっていた。
親の期待に応える、親には迷惑をかけたくない、親孝行をしなければ、その思いが、重かった…。
就職することへの無気力さが、オレの心に靄をかける。
靄がかかった黒い気持ちが、今の一人身のオレには辛かった。
恋人も、好きな人もいないオレ。
恋愛というものも、将来のぼんやりとした不安の一因でもある。
世の若い恋人たちを見る度に、冷たい溜息がふぅと出る。
誰も居ない、本当に誰も居ない世界へ旅立ちたい、そういう思いに駆られることもある。
今のオレは、先の見えない暗闇に閉じ込められている。
もう、灯りを失ったオレには、何をする勇気も、気力も無い。
あるのは唯、将来への『ぼんやりとした不安』だけなのである…。

 道行く人々が、急ぎ足でやってきては去ってゆく。
誰一人としてオレを気にかける人が居ない、街。
そしてオレは、ゆっくりと立ち上がった……。

             

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           ※ ※ ※


   後書

 現代社会に疲れた人々。
そんな人々の心には、いつもぼんやりとした不安がある。
それを自分の過去を元に再現した作品。
大都会を行き交う人々を見ていると、いつも思う。
この一人一人に各々の過去があり、そして未来がある。
明るい未来、暗い過去。
どんな過去や未来でも、ぼんやりとした未来への不安はあるものだ。
自分も就職を前にして抱いたぼんやりとした不安。
それを形にしたのがこの作品です。


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