そこには、毎年恒例の鯉のぼり祭りに訪れていた人々がいた。
そろそろ夕刻になろうとしている時分からか、人の数は余り多くはない。
土手の上の手頃なベンチに腰を降ろすと、早速拾ってきたワニを仕掛ける。
場所は川原の草の上、この上ない好条件の場所だ。
そして俺達は土手上のベンチから様子を伺う。
すると早速、家族連れがやってきた。
子供がワニを見つけると、固まってしまった。
微動だにしない我が子の視線の先を見る母親。
すると母親もまた、奇声をあげると硬直してしまった。
有り得ない……しかし、考えられなくはない。
ペットとして飼われていたのが逃げ出した可能性も…。
でも…まさか……そんなこと…。
そう逡巡考えることが、人間はできるのだ。

 その後も何組もの家族連れが現れては一瞬固まる。
俺達はすっかり、その様子が面白くなって悦びを感じていた。
動かないそれを暫く見つめると、ニセモノだと気付いては笑う彼ら。
中には本気で本物だと思い込んでキャーキャー騒ぐ女子高生もいたり。
通り行く皆が驚く、ということがこれ程面白いものだと改めて認識した人の反応を見る会。
まだまだ修行が足りないことを胸に刻んで川原を去ってゆく俺達。

 人は、有り得ないはずの非日常が起きると固まってしまう。
その状況を認識しようと頭が働き、一時静寂が訪れる。
それがあるはずのない現実というものなのだ…そう結論付けた。

             

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           ※ ※ ※


   後書

 この作品も実話を元に執筆。
あの伝説の人の反応を見る会が行った実験。
人は非日常の恐怖を目の当たりにすると動きが止まってしまう。
そんなちょっとした人間の面白さを書き残しておきたかった作品です。


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