アルはずのナイ現実

 人は、ワニを見ると、一瞬止まってしまうものである。
そう結論付けたのは、俺達の実証の成果でもある。

 俺達は、みどりの日の今日、町へ繰り出し、いつものように不毛な時間を過ごしていた。
川や山、海といった自然に囲まれた風光明媚な町。
そんな自分の生まれ育った町の川沿いを歩いていた。
川は、いつも以上に干上がり、もう中ほどまですっかり歩けるまでに水位が引いていた。
俺達は普段踏み入れることのできないその未開の地に、足を踏み入れた時のことである。
目の前には、見覚えのある何かが転がっていた。
やや黄色がかった蛇腹の体。
それはなんと、仰向けになったワニの体であったのだ。
場所が 場所だけに俺達はそれがワニの死骸だと思うのに十分な理由があった。
まさかと思いながら俺達はそれを触ってみた。
すると、硬く無機質な感触…。
それは死骸などではなく、作り物のワニであった。
当然と言えば当然だが、普段川底にあるそこに転がっていれば、誰でも一瞬本物と思うものである。
と、ここで俺達は自分らが人の反応を見る会の会員であることを俄かに思い出した。
二人、互いにほくそ笑むと、俺達は人々のいる方へと消えていった…。

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