闇の愛情

 「お姉ちゃん、私ならもう大丈夫だよ、心配しないで」
私を心配させまいとする留美。
風邪で些か潤んだ瞳で私に微笑みかける。
あまりの愛おしさに、私は思わず留美の火照ったほっぺにキスをした。
「お姉ちゃん……?」
私のしたことを理解できないのか、きょとんとした顔をしている。
かわいい顔で、私を見つめる。
刹那、私を何かが動かすのが分かった……手が勝手に動く…。
制止の効かぬまま、手は留美の首元へと誘われていった…。
熱い、柔らかな感触が、伝わってくる。
「お、お姉ちゃん…!?」
私の異様な様相に気付いて留美が目を丸くして私を見つめる。
怖がっている様子はない、ただ私が何をするのか分からないようだった。
無常にも、私の指は、そのまま力を入れてゆく。
と、苦しそうにもがく留美の姿が目に留まる。
無表情の私は、やっと我に返り、自分のした許されざる行いを認識した。
「けほっ…お、お姉ちゃん…ひどいよ……」
眦に涙を浮かべ、咳き込む留美の姿。
その姿が、弱々しく、今生きていることを改めて認識した。
私は堪らず臥している留美を腕の中に抱いて泣いた。
「ごめん…留美……本当にゴメン……」
そして強い留美は言った…。
「大丈夫だよ…留美はなんともないから……泣かないで…」
留美は強い子……本当に弱いのは、私のほうだったのかもしれない…。
              
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           ※ ※ ※


   後書

 両親を亡くした二人の姉妹。
まだ小学生の妹と、高校生の姉。
両親の死により、崩壊した姉の精神。
毎日やっと生活していた中、高熱を出し寝込む妹。
そんなか弱い妹を見ていると次第に何かが姉を動かす。
それは将来への絶望か、はたまた人間の本能か。
か弱い妹を殺め、自分も身を投げるのは至極簡単なこと。
けれども妹と生きていくのは至極困難なこと。
そのどちらの選択肢を選択するのか。
妹により、それはもう選ぶ余地は無くなったのです。


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