と、暫くするとどこからか初老の男性がやって来た。
身なりはしっかりしていて、どいうやら散歩に来ているようだ。
そして、来るなりブランコの幼女たちに何やら声を掛ける。
『ブランコはもっと大きく漕いだ方が面白いよ』軽くアドバイスをする。
すると、一斉に、楽しそうにブランコに乗っていた女の子たちから笑顔が消えた。
そこだけ時が止まったかのように、辺りを静寂が包む。
女の子たちは誰一人として喋ろうとしない。
いつしかブランコを漕ぐのを止め、静かにじっと時が過ぎるのを待っているようだった。
初老の男性も、何かを感じたのか、その後何も言わずに去っていった。
西日に照らされた男性の影が、どこか淋しげだった…。
するとどうだろう、女の子たちは何も無かったかのように楽しそうに再び漕ぎ始める。
黄色い声を上げ、無邪気にブランコで遊んでいる。
さっきの静寂は何だったのだろうか…。
余りにも可笑しな状況に、俺は心の中で笑い転げた。
あの男性は特別ロリコンと言うわけではないだろう。
ただ純粋に、孫にアドバイスするようなつもりで言ったことは分かる。
子供たちも、まだ他人を警戒する年頃でもない。
変な人だから無視をする、といった考えは働いていない。
それなのにあの静寂は何だろうか。
ファミレスで楽しく話をしている時にウエイトレスが割り込んできた時のような感じだろうか。
何にせよ、今まで味わったことの無い面白さがそこにあった。
また一つ、俺の心のコレクションが増えたのだ。
夕日が沈むと、俺は静寂の公園を後にした…。

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           ※ ※ ※


   後書

 この作品は実話を元に執筆しました。
公園に足を運んだ際におじさんと幼女との間で繰り広げられた奇妙な時間。
話しかけたのに沈黙。
幼女たちも、おじさんも。
そんな微妙な空気を再現してみたのがこの作品です。
気まずい空気は、日常のどこにでも潜んでいますから(笑)


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