忌祓ノ刻(参)

 「みお…ちゃん……?」
何故此処にいるのかと云いたそうな表情をして私を見つめる。
「詳しいことは後で話すからついて来て…」
そう云うと美代は床を抜け出し黙って私について来る。
そして美代と私は家をそっと抜け出した。
「私、儀式から逃げてきたの…」
「本当…!?」
「うん……だから村から逃げるの…」
蕭々とした村を抜け、一先ず小津女神社へと隠れることにした。
此処は神代村からも一寸離れている。
若し儀式の覡が神代村に来ても時間稼ぎが出来る。
その間隙を縫って裏道から外界へと逃げることも出来る。
私達は虫の啼くくさむらを掻き分け、小津女神社に辿り着いた。
「取り敢えず此処に居れば安全だよ」
「其れにしても澪ちゃん……どうやって逃げてきたの…?」
「うん、本殿に入る前に隙を見て逃げてきたの」
私の心は、叢の闇にも打ち勝つ程、明るく後光が射していた。

 澪ちゃんの気持ちは痛い程よく分かる。
伝統に支配された村…。
神が全てを掌る村…。
そんな村に産まれた私達には、自由は無かった…。
嫁入り前の少女のうち、選ばれた澪ちゃんと私。
そしてもう一人、酉竃村文女あやめちゃん。
今度の儀式は、この三人が贄とされた。
儀式が近くなると二六時中監視が就く様になった。
澪ちゃんが私を起こした時、幸いにも監視は寝入っていた。
彼女が来てくれなかったら、私は神への供物となっていたのだろう。
私の儀式は七日後、執り行われる…。

             忌祓ノ刻(肆)
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