シムチトカ

 シムチトカがやってきた。
カブトムシがポロポロ落ちてきたあの木の向こうにシムチトカがいる。
でもここからは見えない。
ボロボロになったこの廃墟が邪魔で、ここからは見えない。
向こうへ行けば見えるけど、そっちへは行かない。
そっちにはあのムカンボラがいる。
ムカンボラは怖い。
こないだムカンボラに追いかけられたという子供がいた。
ムカンボラに追いかけられるのはゴメンだ。
シムチトカが見れず、どうしたものかと考えている。
するとカブトムシの木が急に前に倒れてきた。
廃墟の横に、バタンと音を立てて倒れた。
幾疋ものカブトムシが、魂消て土にひっくり返った。
緑色をした土の上を、ウネウネとカブトムシが蠢いている。
シムチトカの仕業だろうか。
それともムカンボラの仕業か。
シムチトカだったらいいけどムカンボラだったらどうしよう。
すると大きな影が、廃墟の中にヌボーっと現れた。
この影はムカンボラのものか、それともシムチトカのか。
逃げるようにしてその場から離れて廃墟の後ろに隠れる。
その影は、土の上のカブトムシをワシワシと踏み潰し、やってきた。
もうそこまでやって来ている。
屋根の無くなった廃墟の扉が開いた。


 そして、真っ白なそれは愈々姿を現した。


             


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