青いたけのこ

 紗枝は、今日も学校帰りに竹藪に来ていた。
近頃の紗枝は、手鞠で遊ぶことよりここへ来ることの方が何よりも楽しみだった。

「あっ、また大きくなってる!」

一本の筍を見つけては、嬉しそうに言う紗枝。
そう、筍の成長する姿が、幼い紗枝にとっての楽しみなのだ。
昨日は頭を少し覗かせる程度だったのに今日はもう膝丈の半分程もある。
僅か一日でこれだけの成長振りだ。
その生命力の強さに、紗枝はいつしか見とれていたのである。

 それから暫くのことである。
今日も紗枝は神社横の鬱蒼とした竹藪に来ていた。
けれども、紗枝は泣いていた。
ここ数日成長を見届けてきた例の筍が掘り起こされていたのだ。
丁度食べ頃となった筍は、もう姿を消していたのである。
突然のことに、紗枝は青々と繁る竹の下で咽び泣いていた。
僅かばかりの土地に繁る青竹。
やっとの思いで生え出た筍。
紗枝は筍が不憫でならなかったのだ。
すっかり肩を落とし、その日は帰途に着いた。

 それからというもの、紗枝はすっかり元気が無くなっていた。
ずっと可愛がっていた愛犬を失ったかのような落胆ぶりであった。
心優しい紗枝にとって筍は、自分だけのペットのような存在だったのだ。
その成長振りを見届けることは、自分の子供を見守るような思いだったのかもしれない。
僅か数日のことだったけれども、紗枝は楽しい時を過ごせたことに感謝していた。

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