ビチェコとメランコリー

 「今晩はご馳走をこしらえておくから早めに帰っておいで」
ビチェコのお母さんが云いました。
今日はビチェコの誕生日なのです。
きっと七面鳥やフルーツパイのような豪華なご馳走が待っています。
そう思いますと、ビチェコは体をおどらせて勢いよく丘を駆けて行きました。
ビチェコの家は丘の上にある木板でできた小さな家です。
ビチェコはそこでお母さんと二人で暮らしています。
お父さんは遠くの町で汽車の運転手をしていて家にはいないのです。
普段は見せませんが、本当はお父さんがいなくて寂しいのです。
今日も学校へ向かいながらもご馳走のことや学校のことを考えながらも、お父さんのことを考えているのです。

 「それでは、昨日出しました宿題を黒板に解いてもらいます」
ビチェコはドキッとしました。
昨晩は自分の誕生日のことで頭がいっぱいで、宿題のあったことをすっかり忘れてしまっていたのです。
ビチェコは宿題を忘れたことを云おうと思い手を挙げました。
「はい、ビチェコさん」
ビチェコは椅子から立ち上がり頬を赤らめて言いました。
「僕は昨日うっかりしていて宿題を忘れてしまいました」
ビチェコがそう云いますと、クラスの他のみんなが一斉に哂いました。
すっかり赤くなってしまったビチェコは、ばつが悪そうにもじもじしています。
「分かりました、ビチェコさん。 では他の人にやってもらいます」
先生はまだ哂っている生徒の中から、優秀なマルチーニを指しました。
マルチーニは黒板に宿題の答えを書いていきます。
その間も、クラスのみんなはビチェコを哂っているのでした。

             次の頁
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送