空と、風と、光と

 音が聴こえる…。
何の音だろう…。
目の前には、白い砂浜に、青い海。
そして空気が輝いて、光と風とがダンスをしている。
それは、近く、遠く、潮騒の音。
寄せては返す波が、子守唄だった。
南の島に生まれて、ずっと見続けている海。
青く、輝く海は、何度見ても飽きることは無かった。
それはいつも違う顔を見せてくれていた。
白い貝殻として生まれた私は、この青い海がお母さん。
優しく包んでくれて、優しい子守唄も歌ってくれる。
何も考えることなく、ただお母さんのお話や子守唄に耳を傾ける毎日。
退屈なんてしない。
毎日違う遠い遠い国のお話をしてくれる。
私の知らない海の、知らない世界のお話を。
これが私の命なのだから。

 でもたまに怖くなっちゃうことがある。
強い波で沖まで流されてしまうことを考えると怖くなる。
深くて暗い、孤独の世界。
行ったことはないけど、お母さんが教えてくれた。
海の底は深くて暗い、闇の世界だって。
もし私が海の底に沈んでしまったらどうなっちゃうのかな。
闇の世界には行きたくないの。
夜と同じ、闇の世界なんて…。
私は白くて青い世界に生きている。
空と、風と、光の世界に。
だから私は、今日も浜辺で耳を澄ましている。
お母さんの、やさしい歌声に…。

             

            一覧


       * * *

     後書

人類の故里、それは海。
母なる海に抱かれて、生命は育まれる。
アクアマリンの海に、白亜の砂浜。
白い小さな貝殻が、浜辺で耳を澄ましてる。
母のやさしい抱擁に、全てを任せるかのように。

貝殻を小さな子供に見立てて、執筆した作品。
時折思うんですよね、海が本当に生命の母親だってことを。
でも、海の底は暗くて果てしなく広い。
その恐ろしさも、母親はしっかりと持っているのです。
浜辺で、心を無にして聞く波の音は、生命の還るべき場所へ連れて行ってくれます。


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送