一人漫ろなぶらり旅
私は旅に出た。
*@
薤上
の露が愈々乾き始める時分。
トコトコとローカル列車に揺られ、山々の硲を縫って行く。
*A
丘壑
の地に静謐さを見せる茅茨の家々の流れ。
古の時が、ここには流れていた。
遙か彼方で*B
連亙
する山脈。
その山顛には、未だ融けぬ残雪の輝き。
キラキラと、天を仰ぎ来光の如し。
列車の一人二人の乗客は、車窓より走る田畑を見つめている。
爽快な青い風が、車内に吹き込んでいる。
着いたのは、高原の町。
木陰の涼しい空気を、私は思いっきり吸い込んだ。
その空気は、都邑の灰色のものとは、全くの別物であった。
私は青い空気の下、漫ろに歩き出した。
街は、*C
瀟洒
な建物の続く町並み。
西洋の潔白の家、西洋煉瓦の家。
前庭には芝、菩提樹、色鮮やかな草花。
薔薇の芳香漂う家もあった。
静かな住宅地の、麗らかな日差し。
私は、すっかりこの町に酔いしれていた。
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*注
@薤上(かいじょう)…おおにら・らっきょうの葉の上。
A丘壑(きゅうがく)…丘と谷。
B連亙(れんこう)…連なって遠くまでわたるさま。
C瀟洒(しょうしゃ)…すっきりと洗練されている様子。オシャレな。
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