古い寂れた神社。
古の佇まいが、そこにはあった。
雪の降る日も、雨の日も。
変わらぬその姿に、僕は心の拠り所を見つけた気がした。
紗枝とはよくこの神社を訪れて遊んだ。
今となってはもう、こんな名も無き神社を訪れる人も居ない。
忘れ去られた神社…。
雪の積もる石段を登ると、小さな木製の鳥居が見えてくる。
鎮守様を祀る鎮守の杜。
あの日以来僕の毎日の日課になった。
お参りをして、家族への祈りを捧げる。
こんな雪の日は、寒さよりももっと孤独の方が辛い。
まるでこの世にいるのが僕一人になったかのような錯覚を覚える。

 雪の中では人間は無為に生きることとなる。
地を雪に覆われると外との接触が絶たれる。
ただひたすら、春を待つことしか、人間にはできない。

 ここにいると、紗枝が空から降りてくる。
僕の心に降り積もる雪を溶かしにやってくる。
今日もまた、紗枝はやってきてくれた。
僕の心は、春を迎え、やがてまた雪が積もる。
この繰り返しが、今の僕の生きる道。
孤独に怯え、雪に怯える僕の唯一の道。
そろそろ夕陽が長く影をつくる時分。
明日また来よう…紗枝に会いにきっと……。
          

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           ※ ※ ※


   後書

 雪がしんしんと降る神社に、幼い少女。
オイラの理想的なシチュエーションの文章化第一弾です。
自分の好きなものを存分に配した小説を書きたいなー、という思いで執筆。
雪の降る寒い冬、誰も居ない一人の時間。
幽邃なる山村で、孤独の寂しさを雪の中に見出す主人公。
妹の紗枝は、死んでもいつも近くに居る。
心に穴が開いた主人公が、そんな思いで希望を見出す。
姿は無くても、魂はいつもそばにいる。
雪をも溶かす明るい希望を、抱け、青年!

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