俺は珍しく勉強していた。
明日から期末試験。
成績もこれで決まってしまうと言っても過言ではない。
今回ばかりは勉強しないわけにはいかない。
前回の試験、中間試験では思うように揮わなかった。
なので今回の試験ではいい結果を残したいと思っていたのだったが……。


　　　　コンコン…


ドアをノックする音が聴こえる。

「お兄ちゃん、ちょっといい？」

妹だ。
俺の妹、由美だ。
由美は１２歳の小学６年生。
俺も小学生の頃に戻りたいなぁ…。
そうすればこんな試験勉強なんてやらなくていいのにな…。

「由美か、入っていいぞ」

と、分厚い半纏を羽織った由美が入ってきた。

「どうした？」

俺が用件を聞くなり、由美はベッドの上に腰掛けた。

「あのね、お兄ちゃんにお願いがあるの」
「お願い？　金ならないぞ」
「ううん、違うよ」
「じゃあ何だ？」
「んとね……お兄ちゃんのせーし見せて…」
「へ？」

俺は耳を疑った。
確かに今『せーし』と聞こえたのだが…。
いや、まさかな…。

「え？　何だって？　何を見せろって？」
「だからお兄ちゃんのせーし！」
「ぷっ！！」

確かに由美は発言していた。
しかし、いきなり実の兄に『せーし見せて』とは、最近の小学生は分からんなぁ…。

「いやいや、いきなりそう言われてもなぁ…」
「え〜？　ダメなの？」
「ってかそもそも精子って何か知ってるのか？」
「知ってるよ、赤ちゃんをつくるための種でしょ？」

信じられないことだが、由美は間違いなく知っているようだ。
でもまあ小６にもなれば知ってても不思議はないかもな…。

「どこでそんなの覚えてきたんだよ…？」
「どこって…学校だよ」

最近の小学校ではそんなことまで教えているのか…。
俺の時代は中学になって初めて学んだものだが…。

「さては保健の授業で習ったんだな？」
「違うよ」
「違う…？　じゃあ理科か？」
「ううん、授業でやったんじゃないよ」

授業でやったんじゃない？
俺は理解できなかった。
授業以外でそんなことを教えることがあるだろうか。
最近増えてきているロリコン教師の放課後補習ということはないだろうが…。

「じゃあどうやって知ったんだ？」

俺が気になっていると由美は信じられないを口にした。

「友達から聞いたんだよ」
「と、友達…？　男のか？」
「ううん、女の子だよ」

おいおい、小学生の女の子同士でそんな話をするってどういうことだよ…。
そんな時代が到来してしまったのか？
嫌な世の中になったもんだな…。

「由美の友達に沙耶ちゃんっているんだけどその子が彼氏といつもエッチしてるんだって…」

ちょ、ちょっと待てよ！
本気で言ってるのか…？
だって…小学生でエッチって……ありえないだろ…。
確かにネットとかでは話に聞いたことがあるが、まさか由美の友達でそんな…。
いや、俺は断じて信じないぞ！！
そんなことはあるはずが無い。

「由美、それは冗談で言ってるんだよ多分」

俺が自論を正当化するために由美を諭す。
しかし、由美の態度は依然として変わらない。

「冗談なんかじゃないよ。　実際に由美も沙耶ちゃんに見せてもらったもん…」
「…何を？」
「…携帯カメラで撮った沙耶ちゃんとその彼氏がエッチしてるとこの写真……」
「………」

俺は言葉を失った。
小学生で彼氏彼氏と言ってる時点で俺にとっては信じられないことだった。
が、それどころか、性的行為にまで及んでいる小学生が実際にいるとは…。
今までの俺の小学生純潔論が崩れ去ってゆくのが分かる。
それに携帯カメラで撮ったってなんだよ…撮るなよ…そんなの……。
もうそんな時代になってしまったんだな…。
俺が半ば放心状態になっていると、由美が続けた。

「それでね、沙耶ちゃんがそのせーしっていうのを飲むのが好きなんだって…」
「それで由美もせーしを飲んでみたいな〜って思ったの…」

俺の頭は混乱していた。
今時の小学生の実体を聞いてしまったのもあるが、何より何の気なしにそんな話をする由美に衝撃を受けた。
まだまだ子供の由美が、俺の知らぬところでそんなことを見聞きしていたとは…。
普段何事も無いようにのほほんと過ごしていた由美。
ちょっぴり内気で大人しい由美が、そんなことを平然と口に出来ることに俺は衝撃を受けた。

「…ねぇ、お兄ちゃん、ダメ？」
「………」

もうすっかり試験勉強をする気を削がれてしまった俺。
何かが壊れていくのが分かる…。
毎日由美を意識しすぎる余り、そういう話題は自然と避けていた。
が、しかし、今目の前にいるのは、性に目覚めた俺の妹、由美。
小学生とか妹だとか、もうそんなことはどうでも良かった。
もう辛抱はできなかった…。

「いいよ、由美……こっちへおいで…」
「え…？　……うん！」

無邪気な由美のその笑顔の裏に、俺は何かを感じるのだった…。




　　　　　　　　　　　　　　　　　次回へ続く！！