まぶしい洞窟探検


 雅博たちのいる岩場は、崖の陰になっているので風がとても静かです。
夏の日差しも遮られているのでとても涼しい場所です。
雅博たちはしばらくここで遊んでいくことにしました。

千佳「うわぁ〜、小さい魚がいっぱいいるよ〜!」
雅博「あ〜、ホントだ〜。 あれ何て云う魚だろう…?」
美羽「あれはね〜、サバって言う魚なんだよ」
千佳「いや明らかに違うだろ…」
雅博「多分ボラか何かだと思うけど」
美羽「ボラ? お兄ちゃんの言うことは信じられないよ。 だってお兄ちゃん大ボラ吹きだし」
雅博「何でやねん…」
美羽「何でやねんって、ダジャレだよ?」
雅博「いや分かってるから…」

海に来てもやっぱり美羽のペースに乗せられる雅博でした。
柔らかな波の中、キラキラ光る魚たち。
3人でその水晶のような透明な光を、しばらく見つめていました。

 それから、美羽が発見したのは崖下にできた洞窟でした。
冷たい風が吹きぬけるその洞窟は、奥深くまで続いているようでした。
好奇心の強い美羽は、物怖じすることなくその洞窟へと入っていきました。
その後を雅博と千佳がついていきます。

千佳「ちょっとみっちゃ〜ん、ホントに入るの〜?」
美羽「怖いんならちぃちゃんはお兄ちゃんと外で待ってなよ」
千佳「みっちゃん一人じゃ危ないよ〜、何かいるかもしれないじゃん」
雅博「そうだよ、暗いから足元見えないし危険だよ」
美羽「大丈夫大丈夫!」
雅博「あ、ちょっと美羽ちゃん〜!」
千佳「あっ! お兄ちゃん待ってよ〜!」

千佳は怖いのか、雅博の腕にしがみつきました。
半乾きの紺の布越しに感じる千佳の胸。
ごく小さいながらその柔らかな触感に、雅博は思わず反応してしまいました。
腕に伝わる幸せ。
雅博はそんな幸せを暗闇の中で吟味していたのです。

美羽「おっ! なんかいる!」
雅博「えっ!? な、何がいるの…!?」
千佳「やっ、こ、怖いよ…お兄ちゃん……」

思わず雅博の後ろに隠れる千佳。
お化けがキライな千佳にとって、得体の知れぬものは鳥肌が立つ程怖いものなのです。
女の子らしい一面を見せる千佳に、雅博の本能が反応しました。
怖がる千佳に頼もしい面を見せようと思ったのです。

雅博「大丈夫、僕がついてるからね」
千佳「お兄ちゃん……。 うん、頼りにしてるね…」
美羽「そこにいるのは誰だ! 出て来い!!」

怖がることを知らない美羽は、何者かが潜んでいる岩の裏を落ちていた木の棒で叩きました。
と、その瞬間、何かが飛び出てきました。

千佳「きゃ!!」
雅博「うわっ!」
美羽「わ〜っ! 敵の逆襲だ!!」
千佳「やだやだ〜! 怖いよ〜!」

岩の陰から飛び出てきたのは、なんとコウモリでした。
美羽が見たのは、岩に止まっていたコウモリだったのです。
パタパタと羽音をたてながら洞窟の奥へと消えていきました。
敵の正体がコウモリだと分かると3人は安堵の溜息をつきました。

美羽「なんだ…コウモリか……」
千佳「あ〜もう、びっくりした〜……」
美羽「敵ながらなかなかやるな、あやつ…」
千佳「みっちゃんが叩くからだよ〜」
美羽「そんなこと言ったって……ってそこー! イチャつくな!!」
千佳「えっ? あ、あっ……」
雅博「あ、ご、ゴメン……」

美羽の言葉に、ハッとして雅博の腕から離れる千佳。
不可抗力とは言え、美羽の前で雅博にくっついている所を見られるのは恥ずかしいのです。
美羽は妬いているのか、ムスッとした顔で2人を見ていました。
気まずい雰囲気になってしまったので、雅博は先へ進むことにしました。

雅博「も、もっと奥行ってみようよ…」
美羽「む〜……あたしが一番前だかんな〜!」

美羽は誤魔化された感を感じながらも雅博の前に出て先頭に立ちました。
雅博と千佳は顔を見合わせ、苦笑いをしました。
そして洞窟探検を続けると、雅博は何かおかしなことに気付きました。
足音が近づいているのです。

雅博「ねえ2人とも止まって…」
千佳「えっ?」
美羽「え? 何だよ〜?」
雅博「シーッ! 足音がする…」
千佳「えっ! ちょ、ちょっとやだよ…!」

また雅博の腕にしがみつく千佳。
それをうらやましそうな顔で見ている美羽。
雅博は腕の感触を楽しみながらも耳を澄ませていました。
3人が止まってもその足音は聞こえてきます。
段々と、奥の方から近づいているのが分かります。
しかもその足音は一つではなく、複数あるようです。
3人はいつしか黙り込み、その場でその足音に耳を澄ませていました。
暗い洞窟内に響き渡る謎の足音。
徐々に近づくその音に、3人は再び恐怖に襲われていました。
と、ふと足音が聞こえなくなりました。
かなり近い場所まで来ていたようですが、その足跡ははたと止んだのです。
3人は顔を見合わせました。
一体何が近づいて着ていたのか。
敵か味方か、人間かお化けか。
3人は話し合った結果、その正体をつきとめることにしたのです。
足音のした奥へ歩いて行く3人。
流石に美羽も怖いのか、先頭は雅博に押し付けられました。
ゆっくりと暗い洞窟内を、足元に気をつけながら進んでいく3人。
そして天井の岩の隙間から、明かりが漏れている場所を過ぎた時です。
何か大きなものが岩から飛び出てきました!!

??「わっ!!!」

得体の知れぬその物体は、奇声を上げていました。
反射的に3人も悲鳴を上げてしまいました。

美羽「ぎゃーーー!!!」
千佳「きゃーーーー!!!」
雅博「うわーーー!!」
千佳「やっ! やだやだーーー!!」

3人がパニックになっていると、その飛び出た物体が喋ったのです。

??「おいお前ら落ち着け、あたしだあたし」
雅博「…えっ!?」
千佳「ふぇ…!?」
美羽「え…その声って…」

聞き覚えのあるその声につられて振り返ると、そこにいたのは何と信姉でした。

千佳「お、お姉ちゃん!?」
雅博「な、何でここに…!?」

そして信姉の後ろから茉莉ちゃんとアナちゃんがひょっこり現れました。

美羽「何だよ〜、おどかすなよ〜!」
信恵「はは、ここまで驚くとは思わなかったよ」
千佳「でもどうしてみんなここにいるの?」
信恵「お前らがなかなか帰ってこないから様子を見に来たんだ」
雅博「あ…ゴメン……」
信恵「それで洞窟入るとこを見かけたから先回りして脅かそうとしたってわけ」
美羽「なんだ〜、そうだったのかよ…」

3人は謎の足音の正体を知って安堵しました。
寿命が10年縮む思いをした感じでした。

信恵「それよりもう昼だから飯食いに戻るぞ」
雅博「あ、もうそんな時間なんだ」
千佳「遊ぶのに夢中になってたからね」
アナ「どこで遊んでらしたのですか?」
千佳「この洞窟出たとこだよ。 小さい魚がいっぱいいたんだ〜」
茉莉「え、本当!?」
アナ「わぁ〜、見てみたいですわ〜」
千佳「うん、じゃあお昼食べたらまた来よっか?」
茉莉「うん!」
アナ「はい!」
美羽「魚見たきゃ魚屋行けばいいじゃん。 死んでるけど」
千佳「おい!」

そして、6人は洞窟を後にしました。
洞窟の外に出ると、相変らずの日差しが襲ってきました。
暑い日差しの下歩く水着姿の5人の女の子たち。
雅博のとって夏の日差しよりも眩しかったのは、何よりも5人の水着姿だったのです…。


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