美羽のキモチ


 それから1週間後のこと。
雅博は美羽に呼び出され美羽の家に向かっていました。
何で呼び出したのかメールで聞いても答えてくれませんでした。
でも大方予想はついています。
そして美羽の家の前までやってきました。
どうしても隣の千佳の家の方に目が行ってしまいます。
そして覗くようにして千佳の部屋を見ます。
朝早いということもあってまだ寝ているのか、カーテンは閉まったままでした。
なんとなくうきうきした気分で雅博は美羽の家のインターホンを鳴らしました。
すると、間もなく赤いキャミソールとピンクのミニスカート姿の美羽が顔を出してきました。

美羽「おっ、来たか〜、じゃあ上がっていいよ」

お邪魔しますと言って家に上がる雅博。
家の中はひっそりとしていました。
前と同じように2階の美羽の部屋へと通されました。
入るなり涼しいクーラーの風が雅博を迎えました。
そこは前に見た美羽の部屋そのままでした。
変わったところと言えばドレッサーの位置が少し変わったくらいです。
雅博は適当な場所に座って言いました。

雅博「今日お父さんとお母さんはいないの?」
美羽「うん、朝早く2人だけで旅行に行っちゃったんだよ」
雅博「あ、そうなんだ。 じゃあ美羽ちゃんお留守番?」
美羽「そだよ。 だからお兄ちゃんにも来てもらったんだ」
雅博「あ〜、なんだ、そうだったのか…」
美羽「あれ? もしかしてお兄ちゃん、変なこと考えてた?」
雅博「そ、そんなこと無いよ…」
美羽「ふ〜ん……それならいいけど」

美羽は妖しく微笑みました。
その妖艶な笑みに、雅博はドキドキしていました。

美羽「あ、そうだ、何かジュース持ってくるね」
雅博「あ、いいよ、お構いなく」
美羽「そう? じゃあ面倒だからやめるよ」
雅博「あ…そ、そう…」
美羽「………」
雅博「な…何…?」

雅博をじっと見つめる美羽。
雅博は何か嫌な予感がしていました。

美羽「お兄ちゃんとちぃちゃんってどこまでいったの?」
雅博「…え? な、何が…?」
美羽「だから、どこまで進んだの? もうキスはした?」
雅博「えっ!? …み、美羽ちゃんには関係ないでしょ…?」

雅博はあたふたしていました。
千佳とどこまでいったかなんて平気で口にできるはずがありません。
でも美羽はしつこく問いただしてきます。

美羽「えー? いいじゃん、教えてよ〜」
雅博「ダ〜メ」
美羽「ケチケチすんなよ〜」
雅博「ケチとかそういう問題じゃないの」
美羽「あ〜あ、いいのかなぁ〜、そんなこと言って」
雅博「え…?」
美羽「ちぃちゃんとチューしてたこと、みんなに言っちゃうよ〜?」
雅博「えっ!? ど、どうしてそれを…!?」
美羽「あ〜、やっぱもうチューしちゃったんだ〜!」
雅博「あっ!……は、はめられた……」

雅博はガックリ肩を落としてしまいました。
美羽の罠にまんまとはまってしまった雅博でした。
それからも暫く、美羽は千佳とのデートのこととかをしつこく聞いてきました。
隠し事に弱い雅博は、次々と暴露してしまいました。
そして一通り話し終えると、美羽は満足した様子でした。
美羽は雅博のことをお兄ちゃん的な存在にみています。
なので友達である千佳にそのお兄ちゃんを独り占めされてしまうのが嫌なのかもしれません。
そう思うと千佳には悪いと思ってもどうしても話してしまう雅博でした。

美羽「お兄ちゃんありがとね、色々話してくれて」
雅博「うん…いいよもう……」
美羽「まあそんなに落ち込まないでよ。 今日はお兄ちゃんに頼みがあるんだ〜」
雅博「え…頼み?」
美羽「うん、これだよ」
雅博「……ってまた! それは僕のだよ!」

美羽が持っていたのは紛れも無く美羽に勝手に持って帰られた秘蔵のエロ本でした。
しかも美羽は本を開いて言いました。

美羽「あたしこれやってみたいんだ〜」
雅博「え……?」

美羽が指差していたのは、あろうことか一糸纏わぬ男女が抱き合ってる絵でした。
いやらしい声を出し、明らかに行為に及んでいることが分かります。
いくらおませな美羽と言えどもこんなことを小学生にしていいはずがありません。
雅博の理性は犯罪者にならぬよう必死に回避しようとしていました。

雅博「ダメ! 子供はそんなの見ちゃいけません!」
美羽「あー、子ども扱いしたー」
雅博「だってそうでしょ、まだ小学生なんだから」
美羽「体は子供でも心はもう立派なオトナだよ?」
雅博「立派な大人は『あたしこれやってみたいんだ〜』なんて言いません」
美羽「でもこれは女の人の方から誘ってるよ?」
雅博「そ、それは漫画だからだよ」
美羽「…どうしてダメなの?」
雅博「当たり前だよ、美羽ちゃんはまだ小学生なんだから。 僕は犯罪者にはなりたくないよ」
美羽「あたしはいつでもOKだよ?」
雅博「合意の上でもダメなの」
美羽「なんだよ〜、お兄ちゃんの意気地なし」

美羽はさも残念そうに言い放ちました。
雅博は心の中では動揺しながらも毅然とした態度で対応します。
いきなりのことでちょこっと反応していたものを隠すように。

雅博「じゃあ聞くけどどうしてそんなにやってみたいの?」

雅博はちょっときつめに言いました。
美羽をそこまで動かした動機が何なのかが知りたかったのです。
その言葉に美羽は少し驚いたようですが、ちょっと考え込んで言いました。

美羽「……ちぃちゃんに負けたくなかったから…」
雅博「えっ……千佳ちゃんに…?」
美羽「うん……あたしもお兄ちゃんのこと……好きだから…」
雅博「………」

雅博は言葉が出ませんでした。
面と向かって告白され、美羽のことを妹的な感覚ではなく、一人の女性としてみている雅博がいました。
素直で優しい雅博は、こんな健気な少女には弱かったのです。
いつしか自然とその肩を抱いている雅博がいました。
クーラーのコォーという音が、段々小さく聴こえるようになっていました…。


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