ヒコウキ雲と少女達


 1時間ほどファミレスで時間を潰した後は待ちに待ったショッピングです。
雅博たちはとりあえず駅周辺を歩き回ることにしました。

信恵「どっか入りたい店とかあったら遠慮なく言ってくれ」
美羽「あー! ここ入りたい!!」
信恵「ん? ……却下!」

美羽が指さしていたのはなんとラブホテルでした。
美羽のことだから知っていてわざと言ったのでしょう。
他のみんなもラブホテルと分かると、ちょっと恥ずかしそうな顔をしていました。

美羽「じゃあここは〜?」
信恵「ん? まあそこならいいだろ」
千佳「え、ゲームセンター…?」
美羽「UFOキャッチャーやろうよ、ちぃちゃん」
千佳「ん、まあそれならいいけど…」
茉莉「私、ゲームセンターって入ったことないんだ…」
アナ「私もですわ…イギリスにはこういうお店はありませんでしたので…」
信恵「そっか。 でもそんなに怖いとこじゃないから平気だよ」
千佳「それじゃ行こ、茉莉ちゃん、アナちゃん」

みんなは美羽の望みどおりゲームセンターへと入っていきました。
でも初めて入る茉莉ちゃんとアナちゃんはちょっとびくびくしているようです。
中に入るとゲームの轟音が響いていました。
その音にまたびくつく2人。
信恵がそんな2人の手をとり連れて行きました。

美羽「あー! これかわいいな〜!」
千佳「あ〜、これグルーミーでしょ?」
美羽「口の周りに血……なんて凶暴なクマなんだ…」
千佳「いや、そういうキャラクターなんだよ…」
雅博「じゃあ2人ともやってみる?」
美羽「おう、このUFOキャッチャーキラーの美羽ちゃんに任せとけ!」
千佳「私こういうの苦手なんだよね…」
雅博「あ、じゃあ僕が取ってあげようか?」
千佳「え、取ってくれるの? そっか、お兄ちゃんこういうの得意そうだもんね」
雅博「うん、小学生の頃からやってるから年季入ってるよ〜!」

そう言うと雅博は500円玉を入れてプレイしました。
その様子を固唾を飲んで見守る千佳と美羽。

雅博「よし、ここだ!」

アームが止まり、ぬいぐるみを掴みます。
そしてアームがぬいぐるみを掴んだと思った瞬間!
ポロッとぬいぐるみが落ちました。

雅博「うわっ! 落ちた!」
千佳「あ〜、今の惜しかったねぇ〜」
美羽「何だ、下手くそじゃんかよ〜」
雅博「う〜、もう一回だ!」

雅博はもう一回チャレンジしました。
けれども、何度やっても取れません。
いくら年季が入っててもダメなものはダメなようです。
千佳にいいところを見せたい一心でその後も雅博はやり続けました。
そして、2000円を費やしやっとの思いで取れました。

雅博「や、やっと取れた……。 はい、千佳ちゃんにあげるよ」
千佳「えっ、いいの?」
雅博「うん。 千佳ちゃんのために取ったんだからね」
千佳「ありがと、お兄ちゃん!」
美羽「お兄ちゃん、あたしには取ってくれないの?」
雅博「え? だって美羽ちゃんはUFOキャッチャーキラーなんでしょ?」
美羽「ウソだよ、それ」
雅博「いや、分かってるから…」

雅博が辺りを見回すと、別のUFOキャッチャーで茉莉ちゃんとアナちゃんが初めてのプレイをしているようでした。
後ろで見ている信恵が、失敗する度にうっすら笑っていました。
その後も、ゲームセンターでしばらく遊びました。


 次はみんなの洋服を買うことにしました。
デートで千佳に洋服を買ってあげたお店です。
雅博は今日も気まずい思いをしていました。
けれどもそれは、女の子たちのファッションショーを見ているだけで吹っ飛んでしまっていたのも事実です。

信恵「お〜、アナちゃん、それも似合ってるよ〜!」
アナ「そ、そうですか…?」
信恵「茉莉ちゃんもそれ、かわいいね〜」
茉莉「えへ、なんか恥ずかしいな…」
美羽「お姉ちゃんあたしは?」
信恵「お前はいつもと変わらんな」
美羽「なっ!?」
雅博「うん、千佳ちゃんかわいいよ〜それ」
千佳「わっ! お兄ちゃんいたの!? …じゃあこれにしよっかな〜」

4人はみんなそれぞれ気に入ったお洋服を買いました。
それぞれ紙袋を手に提げて店を出て行きました。
時刻はそろそろ夕方になる頃です。

信恵「それじゃあそろそろ帰るか?」
千佳「そうだね」
茉莉「かわいいお洋服も買えたし」
アナ「はい、とっても楽しかったですわ」
美羽「え〜? もう帰っちゃうの〜?」
信恵「じゃあお前は一人で帰るか?」
美羽「はいはい、民主主義の原則に従えばいいんでしょ〜」
信恵「分かればよろしい」

信姉に言いくるめられる美羽。
そんなやりとりを、雅博は笑って見ていました。
その後、バスに乗り蜆塚へと帰りました。

信恵「じゃあ気をつけてな〜」
千佳「みんなバイバ〜イ!」
茉莉「バイバ〜イ」
アナ「お姉さま、千佳さん、ごきげんよう」
雅博「じゃあまた今度ね〜」
美羽「車に気をつけて帰れよ〜」
信恵「いや、お前も帰れよ…」

雅博と茉莉ちゃんとアナちゃんは帰りが同じ方向です。
キャンプのこと、今日のことを話しました。
そして昨日言っていた今度アナちゃんに英語を教える日時も決めました。
来週の日曜日です。
2人を送った雅博は、うきうきしながら歩き慣れた道を歩いて帰りました。
空を駆ける一矢の飛行機雲が、いつまでも遠く輝いていました…。


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