5月5日の6人組


 次の日の朝、雅博は千佳の家へ向かっていました。
昨日キャンプから帰ってきて今日も千佳の家で遊ぶことになっているのです。
大学で友達がいない雅博にとって、彼女たちは暇な時を共にしてくれる重要な存在になっていました。
そして、千佳の家まで来るといつものようにインターホンを鳴らします。

千佳「は〜い…あ、お兄ちゃん、いらっしゃい」
雅博「ちょっと早く来すぎちゃったかな?」
千佳「ううん、もうみんな来てるよ」
雅博「え、みんな早いなぁ…」

みんなはもう集合しているようです。
そしていつものように千佳の部屋に入っていきました。

雅博「みんなおはよう」
信恵「おっ、来たか」
美羽「おーっす!」
茉莉「お兄ちゃん、おはよう」
信恵「おはようございます、お兄さま」

みんなはいつもの笑顔で迎え入れてくれました。
そんな彼女たちに溶け込むのに、もう雅博は抵抗は全くありませんでした。
雅博はいつものように千佳の隣に座りました。
その様子に千佳や信恵、美羽が気付いたようです。
でも特に気にする様子はありませんでした。

信恵「じゃあみんなそろったところで何かするか」
千佳「何やる? トランプとか?」
信恵「トランプって…お前ら好きだな……」
雅博「僕もトランプでいいけどね」
信恵「おいおい、あんたもかよ…」
美羽「あたし霊能力あるねん」
信恵「は?」
千佳「また唐突な…」
茉莉「え、そうなの?」
美羽「うん。 今茉莉ちゃんの後ろに霊がいるよ」
茉莉「えっ!? や、やめてよ……」
千佳「いや、いないから大丈夫だよ…」
美羽「アナちゃんの後ろには動物霊が……ネコだ!」
アナ「えっ? ネコ…ですか……?」

茉莉ちゃんは本気で怖がっています。
アナちゃんはネコと言われてなんか嬉しそうです。

信恵「じゃああたしには何がついてるんだ?」
美羽「……やかん…」
信恵「何だそれ…」
美羽「ちぃちゃんにもやかんがついてるよ」
千佳「…あそ」
信恵「じゃあお前には何がついてるんだ?」
美羽「え、あたし? あたし天使!」
信恵「……あそ」
雅博「じゃあ僕は?」
美羽「お兄ちゃんは……何もついてないね。 お兄ちゃん霊にも人気無いんだね」
雅博「………あそ」

みんなは美羽のことを冷たくあしらいました。
美羽のボケには、さすがの雅博もついていけなくなることが多いようです。

千佳「そんなことより何かしようよ」
信恵「そうだなー、久しぶりに街にでも行ってみるか」
千佳「あ、いいかも!」
茉莉「私も街行きたいな〜」
アナ「街ですか、いいですわね〜」
雅博「僕も賛成だよ、最近行ってなかったし」
美羽「あたしは反対だよ。 公園行ってサッカーしようぜ?」
信恵「じゃあ多数決で街へ行こう」
美羽「民主主義の横暴だー!」

美羽以外みんなが街へ行くことに賛成しました。
そしてすぐにみんなは外に出て行きました。
近くのバス停まで歩いて、その後はバスで駅前まで移動しました。
そして……

千佳「わ〜、街来たの久しぶり〜」
雅博「あの時以来だよね」
千佳「お、お兄ちゃん……」
美羽「え? あの時って?」
雅博「ヒミツ!」

雅博は美羽には話しませんでした。
千佳とデートをした時に来た以来だったのです。
でも美羽は、そのことは大体見当がついていたようです。

信恵「じゃあまずは腹ごしらえだな」
美羽「おっ、お姉ちゃん気合入ってるね〜」
信恵「今日は朝飯食ってないからな。 茉莉ちゃんたちは何が食べたい?」
茉莉「ん、えっと…何でもいいよ」
アナ「私も何でもかまいませんわ」
信恵「そっか、じゃあファミレスでいいか?」
千佳「うん、いいよ〜」
雅博「異議なし」
美羽「異議あり!」
信恵「じゃあ多数決でファミレスにしよう」
美羽「少数派はどうしてここまで差別されるんだ…」

美羽の言葉は聞き入れられることなく、ファミレスに決定しました。
みんなは近くのファミレスへと入って行きました。
そこは初デートの日に千佳と2人で入ったファミレスでもありました。
雅博はその時の状況を頭の中で思い描いていました。
ファミレスの中には待っている人がたくさんいました。
やっぱりゴールデンウィークということで込んでいるようです。
仕方なく待つ6人。
待つこと20分、やっと順番がきました。
席は6人掛けの席に通されました。
やっぱりここでも自然と千佳の隣に座る雅博でした。

信恵「ふぅ〜、やっと座れるな」
千佳「やっぱゴールデンウィークだから人多いんだね…」
雅博「うん、どこもみんな込んでるんだろうね」
信恵「じゃあ早めに注文しちゃおうぜ」
美羽「今日はお姉ちゃんのおごりね?」
信恵「ん? ああ、お前以外はな」
美羽「はっ!?」
信恵「ウソだよ、ウソ。 でも高いのは頼むなよ」
美羽「おう、まかせとけ!」

美羽は気合を入れてメニューを覗き込みました。
茉莉ちゃんとアナちゃんもどれにしようか決めているようです。
ざわついている店内に流れるBGMが、雅博の耳に自然と入っていきました。
ここに流れる空気は、やっぱりいつもの空気だったのです。


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