星空を見上げれば


 それから何度かゲームをしましたが、結局みんなろくな暴露話をしませんでした。
雅博も1回暴露話をしましたが、千佳との関係は明かしませんでした。
暴露話で話すにはちょっと気が引けたのです。
時計を見ると、時刻はもう9時を回っていました。

信恵「あたしちょっとタバコ吸ってくる」
雅博「タバコ? ダメだって言ったでしょ?」
信恵「1本だけだからさ…な? お願い」
雅博「…じゃあホントに1本だけだよ?」
信恵「おう。 じゃ行ってくるよ」

そう言うと信恵はテントの外に出て行きました。

美羽「タバコってそんなに美味しいのかな〜?」
千佳「う〜ん、どうなんだろ。 お兄ちゃんはタバコ吸わないよね?」
雅博「うん。 体にも悪いしそもそも吸いたいとも思わないし」
千佳「それが一番だよね。 お姉ちゃんもタバコやめればいいのに…」

千佳はテントの入り口の方を見て言いました。
雅博もつられてそちらを見ました。
そして雅博は何となく外の空気を吸おうと外に出て行きました。
外に出ると、夜の高原の涼しい空気が雅博を迎えました。
ふと見ると、近くの川原に一服する信恵の姿がありました。
雅博は信恵にそっと近づいて行きました。
その物音に信恵も気付きました。

信恵「ん? ああ、あんたか…」
雅博「うん。 ここいいかな?」
信恵「ん、別に構わないよ」

雅博は信恵の横に腰を下ろしました。
そんな雅博に、信恵は特に警戒している様子はありませんでした。
そよ風がタバコの煙を流していくのが見えました。

信恵「星、キレイだな……」
雅博「え? あ、ホントだ……キレイだね〜」

空を見ると、満天の星。
今まで見たことないような、素晴らしい星空でした。
遠くの星が、すぐそこにあるように輝いて見えました。
雅博がその星に見とれていると、信恵が話しかけてきました。

信恵「あんたさ、好きな人とかいるのか?」
雅博「えっ!?」

雅博はドキッとしました。
いきなりそういう話になるとは思ってなかったのです。
唐突な展開に、雅博は信恵が自分のことを好きなのでは無いかとも思っていました。

雅博「え、と……いないよ…」
信恵「ホントか?」
雅博「う、うん……」
信恵「そっか…じゃああたしの思い違いだったみたいだな」
雅博「え? 思い違いって…?」
信恵「うん…もしかしたらあんた、千佳のこと好きなんじゃないかって思ってな」
雅博「っ!?」

雅博はハッとしました。
信恵にはそのことは言ったことありません。
千佳がわざわざそのことを信恵に言うとも思えません。
どうしてバレてしまったのか。
雅博は信恵には包み隠すことが出来ないと思い、白状することにしました。

雅博「…なんで分かったの…?」
信恵「やっぱ好きなのか?」
雅博「うん……」
信恵「何でって……あんたが分かりやすすぎるからだよ」
雅博「え、分かりやすい…?」
信恵「うん。 いっつも千佳のこと見てるしいつも近づこうとしてるのがバレバレだよ」
雅博「そ、そうかな…? 自分では普通にしてるつもりだけど…」
信恵「そのしてるつもり、ってのがわざとらしいんだよ」
雅博「……そっか…」

雅博は納得しました。
いつもみんなといる時は、それとなく千佳のことばかり見ていました。
けれども、バレないようにしていたそのこと自体が、他の人から見れば不自然だったのです。
だから美羽にもバレてしまったのです。
そして信恵の言葉はまだ続きました。

信恵「それで? どうしたんだ?」
雅博「えっ? どうした?」
信恵「うん。 千佳には告ったのか?」

信恵はタバコの吸殻を川原の小石に押し付けていました。
その様子を見ながら、雅博は思いました。
もうこれ以上隠すのはやめよう。
いずれは打ち明ける事実であるということを。
それにこの信恵には見透かされると分かっていたのです。

雅博「……うん…。 それで今付き合ってるんだ……」
信恵「……そっか…」

意を決して信恵に打ち明けました。
妹と勝手に付き合って、どんな言葉が返されるか恐れていました。
けれども、信恵はさらっと流してそう言いました。

雅博「え? ……怒らないの?」
信恵「何であたしが怒るんだ?」
雅博「だ、だって…千佳ちゃんと付き合って……」

信恵は火の消えた吸殻をポケット灰皿に入れました。
そして呆れたように雅博に言いました。

信恵「あたしはあんたが千佳と付き合おうと関係ない。 あたしはただの千佳の姉だ」
雅博「じゃあ認めてくれるんだね…?」
信恵「認めるも何も、あたしにはそんなのどうこう言う権利は無いよ」

信恵はうっすら微笑んでいいました。
雅博はそんな信恵に感謝の気持ちでいっぱいでした。
そして信恵は腰を上げ、去り際に一言言いました。

信恵「千佳を頼むな……」

雅博は目頭に涙を溜めながら、その言葉を反芻させていました。
色んな意味の含まれたその言葉。
夜空に輝く大小無数の星が、さらさら流れる小川に煌いるのでした…。


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