いつでもどこでも


 辺りはすっかり暗闇に包まれていました。
かまどに焚いた火が、煌々と周囲を照らしていました。
火の灯りによって、みんなの顔が赤や橙に染められていました。

信恵「ところでテント割りはどうする?」
千佳「あ、そうだね、それ決めないと…」
信恵「テントは両方とも3人用だから3、3に分けるか」
美羽「あたしはちぃちゃんとがいい〜」
千佳「え? みっちゃんと一緒…?」
美羽「え〜? 嫌なの?」
千佳「寝てる間に変なことしないでよ…?」
美羽「大丈夫だよ、多分」
千佳「た、多分…?」
信恵「じゃあ茉莉ちゃんとアナちゃんはあたしと一緒でいい?」
茉莉「え、あ、うん」
アナ「お姉さまと一緒ですか? 嬉しいですわ」
信恵「じゃそっちの2人はあんたに頼むな」
雅博「あ、うん、分かったよ」

テント割りは無事決まりました。
雅博と千佳と美羽の3人、信恵と茉莉ちゃんとアナちゃんの3人です。
雅博は千佳と一緒になれたことでちょっと喜んでいました。
みんなはそれぞれテントに入っていきました。
雅博も千佳たちに続いて左側のテントに入っていきました。

千佳「結構中広いんだね〜」
雅博「そうだね。 これなら4人くらいは入れそうだね」
美羽「どうだ、すごいだろ」
千佳「いや、これアナちゃんが持ってきたテントだから…」

千佳はいつものように美羽にツッコミを入れていました。
こういうとこに来てもやっぱり相変らずの2人の姿に、雅博はホッとするのでした。
と、その時、テントの入り口から信恵が顔を出しました。

信恵「茉莉ちゃんとアナちゃん、もう寝るってけどあんたらはどうする?」
美羽「なっ!? 随分早いな〜」
千佳「今日はたくさん歩いたから2人とも疲れたんだよ」
雅博「うん、湖一周しちゃったもんね」
美羽「あたしはまだ寝ないよ。 夜はこれからだもん」
千佳「う〜ん、私もまだ眠くないな」
雅博「僕もまだ起きてるよ」
信恵「そっか。 じゃこっち来ていいか? 2人とも寝かせてあげるから」
千佳「うんいいよ」
信恵「じゃあ2人に言ってくる」

そう言うと信恵はもう一つのテントに戻って行きました。
小さく「おやすみ」と言う声が聞こえました。
そしてまた信恵が戻ってきてテントに入りました。
4人が座ってもテントにはまだ若干の余裕がありました。

信恵「寝かしつけてきたよ」
美羽「よ〜し、それじゃあ枕投げしようぜ!」
千佳「枕なんて無いから」
美羽「じゃあ何すんだよー?」
千佳「お兄ちゃん、暴露話するんでしょ?」
雅博「あ、うん。 もしかして千佳ちゃんもそういうの好き?」
千佳「えへへ、ちょっと……」
美羽「よし、じゃあ誰から話す?」
信恵「普通に話してもつまらんから大貧民で負けた奴が話すってのはどうだ?」
千佳「あ、いいね〜!」
美羽「よっしゃー! 負けないぞ〜!」
雅博「僕も負けないよ!」

流れは自然と大貧民に移行して行きました。
キャンプに来ても大貧民、この変化の無さに雅博は心で笑っていました。
信恵がいつものトランプをバックから取り出し、カードを配ります。
そして全員にカードを配り終え、ゲーム開始です。
テントの上に吊るされたランタンの灯りが、程よい明るさでした。
そして5分ちょっとで勝負がつきました。
結果は……

美羽「うう…負けた……」
千佳「じゃみっちゃん、何か暴露話してよ」
美羽「ちぇっ……じゃあ……」

美羽は吊るされたランタンを見つめ、何を言おうか考えているようです。
雅博はどんな話が出てくるのかドキドキして待っていました。

美羽「んとね、実はあたしサイコメトラーなの」
信恵「はっ!?」
千佳「何それ…」
雅博「サ、サイコメトラー…?」
美羽「うん。 遠隔操作ができるんだよ」
千佳「………」
信恵「じゃあ何か操作してみろ」
美羽「分かった、ちょっと待ってね。 んん………はあっ!」

美羽は目を閉じたかと思うと、いきなり目を見開きました。
その様子をただ呆然と見詰める3人。
テント内には、静寂が漂っていました。

信恵「……何も起こらんじゃないか」
美羽「違うよ、私の部屋のテレビをつけたんだよ」
信恵「いやそれじゃ意味ねぇだろ……」
千佳「……そんなこったろうと思った…」
信恵「そもそもそれはサイコメトラーとは言わんし……」
美羽「お兄ちゃんはびっくりしたでしょ?」
雅博「ううん、別に」
美羽「え? 何で? もしかしてお兄ちゃんもサイキッカー?」
雅博「何でやねん…」
千佳「お兄ちゃんも困ってるじゃん……」
信恵「もっとましな暴露話は無いのか?」
美羽「無いよ?」
信恵「って……何かひとつくらいはあるだろ…」
美羽「はっ!?」
信恵「お、何かいい話あったか?」
美羽「ヤバッ! テレビの電源どうやって消そう……」
信恵「知らねぇよ……」
雅博「遠隔操作できるんでしょ? だったらもう一回やって消せば?」
美羽「いや、一日一回しかできないんよ」
千佳「………」
信恵「じゃ次やるぞ、次」

美羽のボケ話も終焉を向かえ、今度こそ本当に暴露話をかけて再ゲームです。
長い山の夜は、まだまだこれからなのでした…。


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