キャンプの季節


 五月晴れに恵まれたみどりの日。
いよいよ待ちに待ったキャンプの日です。
雅博はうきうきしながら千佳の家へ向かいました。
背中には大きな荷物。
1週間も前から準備を重ねていたのです。
そして千佳の家に着くと、もう外にみんなが集合していました。

雅博「みんな、おまたせ〜」
千佳「あ、お兄ちゃん、待ってたよ」
美羽「もー、どんだけ待たせんだよー」
雅博「えっ、そんなに待った?」
千佳「ううん、5分くらいだよ」
信恵「お〜い、話はいいから早く荷物積んじゃえよ」
雅博「あ、うん、分かった」

雅博は千佳たちとの話を止め、車に荷物を積みました。
これからこの千佳の家の車を雅博が運転して行くのです。
初めての車での遠出で、少しドキドキしている雅博でした。

信恵「ところで本当に運転大丈夫だろうな?」
雅博「大丈夫だよ、この春無事に免許取れたし」
信恵「はっ!? この春!? 取たてかよ!」
雅博「う、うん……だ、大丈夫だよ、多分事故らないから…(笑)」
信恵「た、多分って……まあいいや、あんたを信じるよ…」
雅博「うん、僕も頑張るよ」

雅博はみんなを乗せて運転するということを改めて認識しました。
その責任の重さに、押しつぶされそうになりそうでした。
でも、千佳やみんなにいい所を見せられる、そう思うと自然とやる気が湧いてきたのです。
千佳の家の車は丁度6人乗りでした。
そして全員車に乗り込みました。
運転席には雅博、助手席には信恵。
その後ろはアナちゃんと茉莉ちゃんで一番後ろは千佳と美羽です。
雅博としては助手席に千佳を乗せたかったですが、そう言うこともできません。
今度は千佳を乗せて2人きりでドライブへ行けばいいと思いました。
いよいよ出発です。
ミラーやシートベルトの運転準備をし、いざ出発です。
後ろの女の子たちは、楽しそうにお話をしています。
これからのキャンプのことでうきうきしているのです。

雅博「それじゃあみんな、出発するよー!」
千佳「うん!」
茉莉「は〜い!」
アナ「楽しみですわ〜!」
美羽「おう! 出発進行!」
信恵「じゃあ安全運転で頼むな」
雅博「うん。 じゃあ行きます……」

雅博は恐る恐る車を発進させました。
ゆっくりと車庫を出て行きます。
その様子に後ろで楽しそうにしていた女の子たちも不安の顔色です。
何とか無事に車庫を出ると、ゆっくりながらも目的地のキャンプ場へ向かいます。
車内には女の子たちの黄色い声が響いていました。
けれども雅博には、その声も耳に入っていなかったのです。
そしてなんだかんだで1時間半。
道中危ない場面は何度もありましたが、無事に到着しました。

雅博「うう〜、やっと着いた……」
千佳「お兄ちゃん、お疲れ様〜」
雅博「ありがと、千佳ちゃん……。 こんな運転したの始めてだからなんか疲れた…」
千佳「でもお兄ちゃん、カッコよかったよ」
雅博「そ、そう? そう言ってもらえると嬉しいな〜」

雅博はテレながら頭を掻きました。
千佳にいい所を見せられたことで、今までの緊張状態から一気に解放されました。

信恵「お〜い、テント張るからみんな手伝って〜」
千佳「は〜い」
茉莉「はい」
アナ「は〜い」
美羽「じゃあ頑張ってね〜」
雅博「いや、美羽ちゃんも手伝うの」
美羽「え〜? あたしは監督だから見てるよ」
雅博「監督なんていらねぇよ…」

雅博は笑って言いました。
嫌々の美羽の背中を押し、テント設営に参加させました。
テントは3人用のが2つ。
全員で組めば十分程度で終わることでしょう。

信恵「ところで誰かテントの組み方分かる奴いる?」
千佳「私分かんないよ」
茉莉「私も…」
アナ「私も分かりませんわ……」
美羽「ダメだなぁ、みんな。 そんなんでよく小学生が務まるよね」
信恵「お前は組み方知ってるのか?」
美羽「ううん、知らないよ?」
信恵「だったら黙ってろ…」
雅博「多分僕なら分かると思うけど…」
信恵「そう? じゃあ指揮はあんたに頼む」
雅博「よし、じゃあお兄ちゃんに任せなさい!」
信恵「お、頼もしいな〜」
千佳「お兄ちゃん、頑張ってね」
雅博「おう! じゃあみんなも手伝ってね」

雅博はここでもお兄ちゃんとしていい所を見せようと奮迅していました。
そしてみんなでテント設営に取り掛かりました。
自然豊かなキャンプ場。
小川のせせらぎや森のざわめきが聞こえてきます。
ゴールデンウィークということで他にも来ている人がいるようです。
けれども広い敷地には、プライベートスペースは十分確保できていました。
朝の暖かな日差しが、冷んやりとした森を照らしていました…。


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