愛する気持ちを形に


 その後、2人は雅博の家へやってきました。
夕刻が迫る時分、雅博の部屋には、西日が射していました。

雅博「上がっていいよ」
千佳「うん、おじゃまします」

千佳がこの部屋に入るのはこれで3度目です。
その慣れた風景にどこか嬉しい気持ちの千佳でした。

雅博「千佳ちゃん、何か飲む?」
千佳「あ、うん、お願い」
雅博「じゃあ麦茶でいいかな?」
千佳「麦茶? なんか季節外れじゃない…? でもそれでいいよ」
雅博「麦茶は安いしね。 いつも作り置きしてるんだ」
千佳「ふ〜ん、そうなんだ」

雅博は冷蔵庫から麦茶を取り出し、2つコップに注ぎました。
千佳はベッドに座り辺りを見回しています。
部屋の内部を見回しても、そこは何度か見た光景が広がっていたのです。

雅博「はい千佳ちゃん、どうぞ」
千佳「あ、ありがと」
雅博「今日は楽しかったね」
千佳「うん! お兄ちゃんにお洋服も買ってもらっちゃったし…」

千佳は嬉しそうにお洋服の入っていた紙袋をギュッと抱きました。
そのかわいらしい仕草を見た雅博は、ハートを射抜かれたような衝撃を受けていました。
そんな雅博の心の中には、既にオオカミが姿を現していました。

千佳「あ、そうだお兄ちゃん」
雅博「ん、何?」
千佳「5月にゴールデンウィークあるでしょ? みんなでどっか行かない?」
雅博「あ、いいね〜! 行こう行こう!」
千佳「うん! じゃあどこ行く?」
雅博「そうだね〜、やっぱゴールデンウィークだからキャンプとか?」
千佳「キャンプか〜。 最近全然行ってなかったからいいかも」
雅博「じゃあ何で行く? 電車? 車? 自転車?」
千佳「う〜ん…自転車は難しいんじゃない?」
雅博「そうだよね……キャンプ行くなら山とかだもんね」
千佳「うん。 じゃあ電車で行くしかないかなぁ〜」
雅博「あ! じゃあ車で行こうよ」
千佳「車で? お兄ちゃん車運転できるの?」
雅博「うん、一応ね。 春休みに免許取ったんだ〜」
千佳「そうなの!? すご〜い!」
雅博「いや〜、そんなことないよ〜」

照れ隠しに頭をかく雅博。
でも満更でもないようです。
千佳にいい所が見せられる、そう思った雅博でした。

雅博「でも免許取たてだからちょっと不安だけど」
千佳「大丈夫だよ、お兄ちゃんなら」
雅博「そうかな?」
千佳「うん! あ、でもお兄ちゃん車持ってるの?」
雅博「あ、持ってないや…」
千佳「じゃあどうしよう? あ、うちの車なら貸してもらえるかも…」
雅博「あ、そう? じゃあ何とか借りることできるかな?」
千佳「う〜ん、じゃあ今度お父さんに頼んでみるよ」
雅博「うん、お願い」

今からキャンプのことを考えると、とても興奮してくる雅博でした。
そしてゴールデンウィークの話が一段落した頃。
外は闇に包まれ始めていました。
遠く射していた西日は、千佳を茜色に染め、そして沈んでゆきました。
そのロマンチックな状況に、2人はいつしか口づけを交わしていました。

雅博「千佳ちゃん…」
千佳「お兄ちゃん……エッチなことするの…?」
雅博「ダメ…?」
千佳「…うん……ちょっと怖い…」

雅博はベッドの上で座った状態から千佳を後ろに倒しました。
でも千佳はこれから行われるであろう光景を想像すると、自然と体がこわばってしまうのでした。
雅博はそんな彼女を気遣って、優しく言葉をかけました。

雅博「大丈夫だよ、千佳ちゃん。 優しくしてあげるから」
千佳「…本当?」
雅博「うん、本当だよ。 千佳ちゃんはまだそういうのに慣れてないもんね」
千佳「お兄ちゃんだってそうじゃん…」
雅博「うっ……そうでした…」
千佳「フフッ…お兄ちゃん面白い」

その言葉にその場は和み、こわばっていた体は自然と力が抜けていくのでした。
雅博はベッドの上で、華奢な体の千佳に抱きついたのです。

雅博「千佳ちゃん! 大好き!!」
千佳「きゃっ! ……ちょ…ちょっとお兄ちゃん…?」
雅博「僕はこうなれることをずっと望んでたんだ…」
千佳「……お兄ちゃん……」
雅博「ねえ…この前の続き…しよ?」
千佳「……うん…お兄ちゃんに任せるよ…」

そう言うと千佳は体の力を抜いてベッドの上に仰向けに寝ました。
いつしか雅博の心の中のオオカミは牙を収めていました。
雅博は、部屋のカーテンをそっと閉め、つけていたテレビを消しました…。


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