プレゼントと千佳


それから1分程すると、試着室のカーテンが開きました。

千佳「あっ、お兄ちゃん。 えと…これ…どうかな?」
雅博「お、いいね〜、すごく似合ってるよ!」
千佳「そ、そう…? ありがと」

雅博の前に現れたのは、ピンク色の可愛らしいお洋服を着た千佳でした。
着ている服が違うだけで普段見慣れている千佳とは、どこか違うような印象を受けました。

千佳「じゃあもう一着の方に着替えるからどっちがいいか選んでね」
雅博「うん、任せて」

そう言うと千佳は再び試着室のカーテンを閉めました。
雅博はちょっとドキドキしながら千佳が着替え終わるのを待っていました。
そして再びカーテンが開きました。

千佳「じゃあさっきのとこれ、どっちがいいかな?」
雅博「おっ、それもいいね〜。 すごく似合ってるよ」
千佳「えへ、ありがと」
雅博「さっきのもいいけどこっちもいいね〜」

今度は水色でかわいらしい水玉模様のお洋服です。
確かにどちらも甲乙つけがたいくらいに似合っていました。
雅博はどっちの方がいいのか決め兼ねているようです。

千佳「お兄ちゃんが決めていいよ。 お兄ちゃんが決めた方にするから」
雅博「え、いいの?」
千佳「うん、だってお金払うのお兄ちゃんだし、それにお兄ちゃんに選んでもらいたいから…」
雅博「…千佳ちゃん……」

雅博は感動していました。
まさか、千佳の口からそのような言葉が出るとは思ってもみなかったのです。
雅博に決めてもらいたい、これは千佳が雅博を彼氏と認めた言葉に他ならないのです。

雅博「う〜ん……この水玉の方がより千佳ちゃんに似合ってるかな〜?」
千佳「あ、そう? じゃあこっちにするよ」
雅博「うん。 ホント、よく似合ってるからね」
千佳「えへへ。 じゃあ着替えるから待っててね」

そして千佳は最初に着ていた服に着替え、水玉模様のお洋服を雅博に渡しました。
雅博は清算を済ませ、千佳にプレゼントしました。

雅博「はい、千佳ちゃんにプレゼント」
千佳「ありがとう、嬉しいな〜」
雅博「そんなに喜んでもらえるとこっちまで嬉しくなってくるよ」
千佳「お兄ちゃんってホントに優しいよね〜」
雅博「うん、前から千佳ちゃんにプレゼントしたかったんだ」
千佳「そうなんだ……ホントに嬉しいよ」

千佳は本当に嬉しそうな顔をしていました。
その笑顔を見るだけで、雅博は心底安心するのでした。


 その後、2人は駅ビルを出ると近くのファミレスへと入っていきました。

雅博「それじゃあ何でも好きなの頼んでいいからね」
千佳「いいよ、お昼くらいは自分で出すから」
雅博「何言ってるの、彼女は彼氏にお金を出してもらうもんだよ?」
千佳「えっ…? ……そっか…私たち…付き合ってたんだよね……」
雅博「うん。 どうしたの? 急に」
千佳「ん〜、なんかイマイチ実感が湧かなくって…」
雅博「そっか……まだ付き合って間もないしね…。 それにあんまり会ってなかったし」
千佳「うん……私自信付き合うってことがどういうことかあまり分かんなかったし…」

千佳は恥ずかしそうにはにかみながら言いました。
無理もありません。
千佳はまだ小学6年生、付き合うにはちょっと早い年頃です。
それまで色恋沙汰には縁の無かった千佳にとっても、雅博は特別な存在に思えていました。
けれども、それは恋心と言うよりは尊敬できるお兄ちゃんのような存在だったのです。
でも今はもう彼氏と彼女。
付き合っていることに間違いはありません。
でもこの2人を傍から見るとまず付き合っているようには見えないことでしょう。
兄妹には見えるかもしれませんが、雅博が千佳を拐かしているようにも見えることでしょう。
雅博はちょっと周囲の目を気にしながら、千佳に言いました。

雅博「そっか…。 あ、とりあえず何か注文しようよ」
千佳「うん、そだね」
雅博「じゃあ僕は……ジェノヴァ風ドリアでいいや。 千佳ちゃんは?」
千佳「えっと……たらこスパゲティーがいいな」
雅博「うん、いいよ。 じゃあ苺パフェも2つ頼もうか?」
千佳「うん! お兄ちゃんも食べるの?」
雅博「そうだよ、僕も甘いものは好きだからね」
千佳「そうなんだ。 男の人って甘いものダメな人多いよね」
雅博「うん。 僕は甘党って程じゃないけど洋風の甘いものだったら好きなもの多いんだ」
千佳「え、そうなの? じゃあ今度お兄ちゃんにクッキーとか作ってあげるよ」
雅博「え、ホント!? 嬉しいなぁ〜、千佳ちゃんが僕のためにクッキー作ってくれるなんて」
千佳「じゃあ今度会う時にあげるから楽しみにしててね」
雅博「うん、楽しみにしてるよ」

雅博は嬉しさでいっぱいでした。
お菓子作りが好きな千佳の作るクッキー。
しかも雅博のためだけに作ってくれるというではありませんか。
今からその愛の込もったクッキーが楽しみな雅博でした。
そしてファミレスで1時間ほど楽しくお話をしながら過ごすと、その後近くのゲームセンターへ行きました。
そこで千佳のためにUFOキャッチャーでかわいいキャラクターのぬいぐるみをとってあげました。
500円玉を入れ、最後の5回目でなんとか取れました。
雅博はそれも千佳にプレゼントしました。
初めてのデート。
何もかもが新鮮で、一瞬一瞬がとても楽しい時間。
雅博は、この時間が永遠に続いてくれれば、そう思っていました。
初デートの最後、雅博にはいい案がありました。



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