鼓動を感じて


 雅博の手は、千佳の布団の中に入っていきました。
雅博の理性は、この行為を許してしまったのです。
千佳の布団に手が届くと、そこから千佳の手を探る雅博。
千佳の手はすぐに見つかりました。
温かく柔らかな千佳の手。
雅博がそっと触れると、千佳が小さく声を上げて動くのが分かりました。

千佳「え……お兄ちゃん…?」
雅博「ち、千佳ちゃん……起きてたの…!?」
千佳「うん……」
雅博「ゴメン……手…繋ぎたかっただけなんだ…」

微かな灯りの元、千佳と至近距離で目が合う雅博。
千佳にばれたことと目の前に千佳がいることでドキドキしています。
胸のドキドキが、怖いけどどこか楽しい雅博でした。

千佳(…お兄ちゃん…そんなに私のこと好きなのかな……)

千佳は、雅博の真摯な思いを酌んでいるようです。
そう思うと不思議と嫌な気持ちはしませんでした。
まだ恋をしたことが無い千佳にとって、胸が高鳴るのに気付くのはまだ早いのでした。
そして雅博がもじもじと言葉を紡ぎ出して言いました。

雅博「その……手…つないでくれる……?」
千佳「………ん…いいよ…」
雅博「本当!? ありがと千佳ちゃん!」
千佳「ちょっとお兄ちゃん…声大きいよ……茉莉ちゃん起きちゃう……」
雅博「あっ、ご、ゴメン……」

千佳にそう言われると雅博は口を押さえました。
でも幸いにも茉莉ちゃんは眠ったままのようです。
二人はホッと胸を撫で下ろしました。
そして承諾をもらった雅博は、改めて千佳の手を握りました。
生まれて初めてまともに繋ぐ女の子の手。
温かくて、柔らかくて、小さくて……とても愛しい…。
指の一本一本が、ビロードのような滑らかさ…。
雅博は、千佳の小さな手に指を絡めてお互い握り合うのでした。

雅博「ありがとね…千佳ちゃん…」
千佳「ううん…私でよかったら…」
雅博「………」

その言葉の真意を、雅博は聞きませんでした。
2人とも天井を見つめ、考えを巡らしているようです。
さっきまで遠く聴こえていた虫の声は、いつの間にか聴こえなくなっていました。
手を通して伝わってくる千佳の体温と鼓動。
自分よりも一回りも二回りも大きい雅博の手。
手を握ると、握り返してくる、そんな時間が楽しかった。
雅博は眠りにつく前に、自然と涙を流していることに気付かないのでした。


 次の日、雅博は朝7時前に目が覚めました。
外からは朝のキレイな木洩れ日が射していました。

千佳「あ、お兄ちゃん、おはよう」
茉莉「おはようございます…」
雅博「あ、おはよう…」

ベッドの上には、もう起きていた千佳と茉莉ちゃんが座っていました。
どうやら二人ともマンガを読んでいたようです。

雅博「二人とも早いね」
千佳「うん…なんかあんまり眠れなくって……」
雅博「あっ、もしかして僕いびきかいてた…?」
千佳「ううん、かいてなかったよ」
雅博「そっか…よかった……あ、洗面所借りていい?」
千佳「うん、どうぞ」

雅博は寝癖をつけたまま洗面所へ向かいました。
2階のトイレの前の洗面所で、顔を洗い寝癖を整える雅博。
朝、生理現象とは言え自然にエレクトしてしまうのは困るものです。
とりあえずトイレに入り何とかすることにしました。
すっかり元気になってしまったものを取り出しました。
この様子では、一度抜かないと元に戻らない様子です。
と、雅博が四苦八苦しているとトイレのドアが開きました。
ヤバイと思ったときにはもう手遅れでした……。

雅博「うわっ! …ちょっ……!!」
信恵「……朝っぱらから元気だな…」

ドアを開けたのは信姉でした。
鍵を掛けていなかったので横からモロに見られてしまいました。
信姉はそのエレクトしたものを見るなり恥ずかしそうにしながらドアを閉めました。
状況から判断して、信姉には雅博がソロ活動に勤しんでいるように見えたのです。
信姉に見られてすっかり動転してしまった雅博。
お陰でエレクトしていたものはすっかり萎えてしまっているのでした…。

雅博「……最悪…」

雅博は小を済ませ、千佳の部屋に戻ったのです。


      前へ  一覧  次へ

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送