おねむの時間


 時刻は10時を回りました。
そろそろ就寝の時間です。

茉莉「ふぁ〜……」
千佳「茉莉ちゃん、もう眠い?」
茉莉「うん……普段ならもう寝る時間だから…」
信恵「そっか……じゃあもう寝るか?」
雅博「そうだね」
美羽「え〜? まだ夜はこれからだろ?」
信恵「じゃあお前だけ家帰って一人で夜を楽しむか?」
美羽「うぅ〜……」

そう言われると美羽も逆らえないのでした。

信姉「それじゃあ下から布団持ってくるからちょっと待っててくれ」
千佳「あ、私も行くよ」

信姉と千佳はそう言うと部屋を出て行きました。
残された三人。
茉莉ちゃんはもううとうとして今にも眠りこけそうです。
美羽はそんな茉莉ちゃんをじっと見つめています。
雅博は美羽が茉莉ちゃんに何かをしようとしてるのではないかと思っています。
美羽のことだから茉莉ちゃんにいたずらをすることも考えられます。
雅博は、すっかりお兄ちゃんの気持ちになりました。
そして、美羽が茉莉ちゃんの体にそっと触ろうとした時、千佳たちが戻ってきました。

信恵「ここに布団置いとくから自由に使っていいぞ」
雅博「うん、ありがと」
美羽「ちぇ、もう少しだったのにな…」
千佳「ん? 何か言った? みっちゃん」
美羽「ううん、別に何も言ってないよ」
信恵「それじゃああたしは部屋に戻るから」
千佳「あ、うん、おやすみ〜」
美羽「おやすみ、お姉ちゃん」
雅博「おやすみ〜」
茉莉「す〜……」

信姉は自分の部屋へと戻っていきました。
茉莉ちゃんはすっかり寝入ってしまったようです。

千佳「茉莉ちゃん、寝ちゃったね…」
雅博「うん…」
千佳「起こすの可哀想だからそのままにしてあげよ?」
雅博「そうだね……」
千佳「みっちゃん、茉莉ちゃん起こしちゃダメだからね?」
美羽「大丈夫。 あたしも起こさないように頑張るから」
千佳「いや…そんな大げさな…」

壁にもたれかかってかわいい寝息をたててる茉莉ちゃん。
そんな茉莉ちゃんを起こさないように静かに床に布団を敷いていきます。
テーブルを廊下に出して、広いスペースを確保します。
でも布団2枚が限度のようです。

千佳「ん〜、どうしよっか……一人分敷けないや」
雅博「う〜ん……じゃあ僕は廊下で寝ようか?」
千佳「え? いいよ、私が廊下で寝るから…」
美羽「あ! あたしいいこと考えた!」
千佳「…何?」
美羽「あたしお姉ちゃんの部屋で寝るよ」
千佳「え〜? お姉ちゃんの部屋で…?」
美羽「うん、じゃあ行ってくるね」
千佳「……行っちゃった…」

美羽は喜び勇んで信姉の部屋へ布団を持って行ってしまいました。

千佳「お姉ちゃんみっちゃんと一緒に寝てくれるかな…?」
雅博「どうだろうね…」
千佳「まあいいや、それじゃあお兄ちゃんはどこに寝る?」
雅博「僕は床でいいよ。 千佳ちゃんはベッドに寝るでしょ?」
千佳「あ、私はいいよ、茉莉ちゃんが起きたらベッドに寝てもらうから…」
茉莉「…ん……? ふぁ〜……あれ? 私寝ちゃった…?」
千佳「あ、茉莉ちゃん起きた?」
茉莉「あ……ゴメン……私…寝ちゃったみたい…」
千佳「ううん、平気だよ。 じゃあ茉莉ちゃんはベッドに寝て」
茉莉「え…? 私はいいよ、千佳ちゃん寝て…」
千佳「私はいいから茉莉ちゃんが寝てよ」
茉莉「…私が寝ちゃっていいの?」
千佳「うん、私はお兄ちゃんと床に寝るから」
茉莉「うん、ありがと…」

時刻は10時半。
こうして寝る場所も決まり、それぞれが布団の中に入りました。

千佳「それじゃあ電気消すね」
雅博「うん」
茉莉「うん…」

カチカチ、と2回音が鳴り、部屋の電気は消えました。
小さな微照灯が、ほんのり淡い光を放っていました。
3人は、静かにそれぞれ瞳を閉じて明日を見つめていました。
静かな、虫の声が優しく微かに聞こえる夜。
女の子たちと、初めての一夜。
雅博の脳裏には、今日あった出来事が走馬灯のように甦ってきました。
千佳との触れ合い、みんなとの夕食、美羽との入浴…。
一日でもう人生の幸せを全て味わったかのような一日でした。
1週間前、千佳たちと出会う前は思っても見なかった幸せ。
そんな幸せを味わえる贅沢さに、雅博は浸っていました。
寝ようと思っても寝付けません。
無理も無いです。
普段は夜中の1時2時に寝ているというのに今はまだ10時半。
それに女の子と、それも千佳と一緒の部屋で寝ていると思うと自然と興奮してしまうのです。
雅博は微かに見える闇の中、さりげなく千佳の方を向きました。
千佳は仰向けで眼を瞑って静かな寝息をたてています。
横を向けば1メートルちょっとのところに千佳がいる。
そんな状況で、寝られるわけがありません。
お風呂上りの香りが、未だ香る部屋の中で、雅博は薄目を開けて千佳をじっと見つめていました。
まだまだ幼いながら、整った顔立ち。
お風呂上りで潤ったキレイな短めの黒髪が、艶かしく暗闇で光っていました。
雅博の手は、無意識に千佳の方へと寄っていたのです…。


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