運命と縁


 それから3人で1時間ほど遊んでいると信姉が帰ってきました。

信恵「ただいま〜…お、今日も来てたか」
雅博「あ、うん、お邪魔してま〜す」
千佳「お姉ちゃんお帰り〜」
美羽「お帰り〜」
信恵「お前も来てたのか…」
美羽「何その言い方…まるであたしが邪魔者みたいじゃん?」
信恵「みたい、じゃなくてそうなんだよ」
美羽「ひどい……ひどすぎるわ……」

そして信姉は自分の部屋に荷物を置くや否やすぐに隣の千佳の部屋に来ました。

信恵「あんた今日は朝から来てたのか?」
雅博「うん……まずかった?」
信恵「別にそういうわけじゃないが…。 来ても別に何もすること無いだろ?」

信姉は千佳の勉強机のイスに座って言いました。
けれども、雅博にとってはただ女の子たちと話をすることでも十分楽しいのです。

雅博「そうだね。 でも何もしないで話をするだけでも楽しいんだよ」
信恵「そういうもんかね。 まあ彼女もいたためしが無い男だしな」
美羽「それにロリコンだからね〜」
雅博「だから〜、それは言わないでって」

美羽の相変らずに当惑しながらも心のどこかで嬉しさを感じている雅博でした。
その様子を見た千佳も、雅博に微笑みかけて一緒に笑っていました。

信恵「そういえば今日は茉莉ちゃん来てないのか?」
千佳「うん、家族でお出かけするんだって」
信恵「そうか…ちょっと残念」
美羽「なんだよぅ、あたしがいるじゃんかよ〜」
信恵「そうか……もっと残念」
美羽「はっ!?」
千佳「ぷぷ…!」
美羽「そこ! 笑うなー!!」
雅博「ははは、いや〜愉快愉快」
美羽「あんたは一人で笑ってろ」
雅博「はっ!?」

雅博は美羽に冷たくあしらわれてしまいました。
すると自然とみんなから笑いがこぼれました。
そして暫く4人で楽しく会話を楽しみました。

千佳「さてと、そろそろ勉強しようかな」
美羽「勉強ー? 宿題も無いのになんでそんなのやるの?」
千佳「いいでしょ別に。 5年生の復習をするんだから」
信恵「復習なんてするのかよ。 くそまじめ」
美羽「なんだ、くそまじめか」
千佳「お前らうるさい! そんなこと言うなら出てけよ」
信恵「あ、うそうそ、冗談だよ」
美羽「なんだ、冗談か」

信恵と美羽に茶々を入れられた千佳。
そんな千佳は勉強机のイスに座ると机の上のブックスタンドから5年生の時の算数のノートを取り出しました。
それを見た雅博は、いいところを見せようと思い言いました。

雅博「千佳ちゃん、よかったら勉強見てあげようか?」
千佳「え、いいの?」
雅博「もちろんだよ。 でも教え方には自信ないけど…」
千佳「じゃあお願いしよっかな」
美羽「あんたに算数なんてわかるのかー?」
雅博「これでも一応大学生です」
信恵「大学生ってと、やっぱり難しい数学とかもやってるのか?」
雅博「僕は文系だから数学はやってないんだ」
美羽「なんだ、やっぱり算数なんてわからないんじゃないか」
雅博「いやいや、算数くらいだったら文系の僕でも分かるよ」
千佳「あー、それじゃあ早速なんだけど…」

雅博は千佳の勉強を見てあげています。
その間に信恵や美羽の邪魔が入りながらも勉強を進めていきました。
学校では千佳の成績は中の上くらい。
決してよくできるわけではありませんが、努力を惜しまない子なのです。
そんなひたむきな姿に雅博はますます千佳のことを好きになるのでした。
一方の美羽は学校の成績は中の下。
はっきり言ってできる方ではありません。
宿題もいつも千佳に見せてもらっていたり怠け者のところがあるのです。
いつも千佳の勉強の邪魔をしては相手にしてもらおうとするのでした。

千佳「あー、終わったー……」
雅博「お疲れ様。 どう、こんな僕でも少しは役に立ったかな?」
千佳「うん、よく分かったよ。 ありがと、お兄ちゃん」
雅博「僕でよかったらいつでも見てあげるからね」
千佳「うん、ありがとー」
美羽「じゃああたしも宿題出たらやってくれ」
雅博「それは自分でやりましょう」
美羽「何だよ、ケチー!」
雅博「宿題は自分でやってこそ意味があるんだよ。 分からなかったら教えてあげるから」
千佳「お兄ちゃんって優しいんだね」
雅博「そ、そうかな…?」
信恵「今まではその優しさを伝える相手がいなかった……悲しいことだ」
雅博「うう……それは…」
千佳「でもお兄ちゃん友達はいるんでしょ?」
雅博「………」
千佳「え…いないの…? 一人も?」
雅博「……うん…」
美羽「それじゃあオタでロリコンでひきこもりか。 おお! これで3冠王だな!」
信恵「マジで一人もいないのか?」
雅博「うん…高校時代の友達はいるけど…大学ではいつも一人…」

流石にこの言葉に3人とも雅博のことを同情の目で見るようになっていました。
あの美羽でさえ同情しているのです。
雅博がしょんぼりしていると、千佳がなぐさめの言葉をかけてくれました。

千佳「で、でも私たちがいるし…もうこれからは一人なんかじゃないよ」
雅博「千佳ちゃん……ありがと…みんな…」
美羽「これからは4人で仲良くやっていこうぜ」
信恵「茉莉ちゃんいれて5人な」
雅博「うん…嬉しいよ……みんな…そして、ありがとう…」

雅博は嬉しさの余り、泣きそうになりました。
こんなにいい子たちと出会えたのは運命的だと思いました。
この縁を大切にして、これからずっとこの子たちと仲良くやって行きたいと思ったのです。
そして、最終的には千佳に思いを伝え、千佳といい関係になれたらと思う雅博でした。


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