千佳の場合


 そして次の日。
今日は土曜日、学校はお休みです。
雅博は朝早くから昨日出逢った少女たちの所へ向かいました。
歩いても10分ほどの近い距離です。
春の爽やかな空気がとても心地いい朝です。
そして、雅博は千佳の家へとやってきました。
『ピンポーン』インターホンを鳴らしました。
するとすぐに、誰かが出てきました。

千佳「は〜い……あ、いらっしゃ〜い」
雅博「あ、どうも」
千佳「どうぞ上がって〜」
雅博「お邪魔しま〜す」

雅博は千佳に言われて上がりました。
そして2階の千佳の部屋に通されました。

千佳「今日はお姉ちゃんいないんだ」
雅博「そうなんだ。 どこ行ったの?」
千佳「学校で模試があるみたいで学校へ行ったよ」
雅博「ああ、模試ね。 僕も昔はよくやったなぁ〜」
千佳「お兄ちゃんもやったんだ、そういうの」
雅博「うん。 高校は一応進学校だったから模試は多かったな〜」
千佳「へ〜。 じゃあお兄ちゃん頭いいんだ」
雅博「あ、でも頭いいかどうかは別かな」
千佳「ふ〜ん。 じゃあ頭悪いんだ」
雅博「いやそういうわけでも……あ、そういえば美羽ちゃんは?」
千佳「ああ、あれは呼んでないよ。 だってうるさいんだもん…」
雅博「そうなんだ……まあ確かにちょっとうるさいかもね…」
千佳「うん。 毎日のように一緒に居ると疲れるのよ」
雅博「……心中お察しいたします」

千佳はベッドに座り、雅博は床に座ってお話です。
今は二人きり、昨日だけでは分からなかったことをお互い聞いているようです。

千佳「お兄ちゃんってさ、本当に彼女とかいないの?」
雅博「え…う、うん……本当だよ」
千佳「そうなんだ。 大学生っていうともうみんな恋人がいるもんだと思ってたけど…」
雅博「へえ〜、千佳ちゃんはそう思ってたんだ。 でも実際は結構居ない人もいるんだよ」
千佳「ふ〜ん。 そういうもんなんだ」
雅博「うん。 それじゃあ千佳ちゃんは彼氏とかいるの?」
千佳「え、私!? いるわけないじゃん……まだ小学生だよ?」
雅博「でも最近の子は小学生でもいる子とかいるじゃん?」
千佳「ん〜、でもうちの学校はそういう話全然聞かないんだよね〜」
雅博「そうなんだ。 じゃあ千佳ちゃんの学校は健全なんだね」
千佳「そうなのかな〜? でも私も今は彼氏とか欲しいって思わないし…」
雅博「まあ小学生だもんね。 でも実は僕はすごく彼女が欲しいんだ…」
千佳「そうなの?」
雅博「うん……今までもいたことがないから…」
千佳「あ〜、まだ付き合ったことないんだ?」
雅博「うん……恥ずかしながら…」

雅博は恥ずかしそうに下を向いています。
相手は小学生とはいえ女の子です。
女の子の前で未だ付き合ったことが無いと言うのは恥ずかしいことだったのです。

千佳「あ、でも気にすることないんじゃない? だって大学でもそういう人いるんでしょ?」
雅博「あ、うん…そうだね、千佳ちゃんありがとう」

雅博はそう言うと黙ってしまいました。
千佳もまた、何を言っていいのか分からずに黙ったままです。
部屋の中に、沈黙が訪れました。
気まずい雰囲気が漂っています。
実は、雅博は最初に会った時からこの千佳ちゃんに一目惚れしてしまったのです。
でも相手は小学生。
自分の思いを伝えようにもどうしても思い切れないのです。
なので千佳ちゃんと二人きりになって何を話していいのか分からないのです。
でも雅博は思い切って聞いてみることにしたのです。

雅博「えと、じゃあさ好きな人とかはいる?」
千佳「好きな人……? う〜ん…いないな〜」
雅博「そうなんだ、よかった…」
千佳「え?」
雅博「あ、う、ううん、何でもないよ…」
千佳「……あ、そうだ、ジュース持ってくるね」
雅博「あ、うん、ありがとう」

そう言うと千佳は部屋を出て行きました。

雅博「ヤバイ…もしかして気付かれちゃったかな…?」

雅博は千佳がもしかして自分が好きだということに気付かれたかと思っているようです。
春の日差しが差し込む、麗らかな朝のことでした。


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