縁と運命と


担任「えーと、それじゃあ君の席は……あ、あそこでいいな」

担任が指を指した先は……なんと、名雪の隣の空いている席だった…。
運命的なものを感じながらも、窓際の名雪の隣の席へと座る。
隣の名雪は俺に微笑みかける。
そして、香里も俺の斜め前の席で微笑んでいた。
その微笑が、今の俺にはとっても嬉しかった。
親しげに笑みを交わしてる俺たちをクラスの生徒たちは怪しげに見ている。
まあまさか俺たちが7年来の仲とは、知る奴もいないだろう。
そして、簡単なホームルームが終わると、名雪たちが俺に話しかけてきた。

名雪「同じクラスだったんだね〜」
祐一「そうだな、俺もまさかと思ったよ」
香里「それに席が名雪の隣だなんて…あなたたちできてるの?」
祐一「な、何言ってんだよ、たまたまだよ、たまたま」
名雪「うん、私も驚いたけど空いてる席はここしかないしね」
香里「まあそれもそうよね」

偶然とはいえ、たまたま隣になったのには、何か腐れ縁のようなものがある様にも思える。
思えば7年ぶりに再会したのも腐れ縁とも言える。
もしかしたら、俺たちには何か本当に赤い糸でもないが、そんな何かで結びつけられているのかもしれないな。

そして、始業式が終わり、帰りのホームルームも終わると放課後となった。
初めての学校も、ひとまず無事に終えることができたわけだ。
ホッと安堵していると、名雪が話しかけてきた。

名雪「私、これから部活あるんだけど」
祐一「そうか、それじゃあ行って来いよ」
名雪「一人で帰れる?」
祐一「ああ、多分大丈夫だ」
名雪「あ、でも玄関まで行くからそこまで送るよ」
祐一「え、ああ…」

俺と名雪は教室を出た。
香里は用事があると言ってホームルームが終わるとすぐに教室を出て行った。
俺は、今名雪と二人きりで新しい学校の校舎を歩いている。
不思議な縁が、寒い真冬に再び舞い降りていた。

名雪「ところで祐一は部活入らないの?」
祐一「俺はそういう面倒なのに首を突っ込む気はない」
名雪「じゃあ料理クラブにでも入ったら? そしたら祐一大活躍だよ」
祐一「人の話を聞けっての」

名雪は勝手に話を進めていた。
俺はそれを聞き流していると、目の前に不思議なものが見えてきた。

祐一「ところで名雪、あれは何だ?」
名雪「ドアだよ」
祐一「いやそれは見れば分かる、あれはどこにつながってるんだ?」
名雪「渡り廊下になってるんだよ。 中庭に出れるんだよ。 行ってみる?」
祐一「いや、遠慮しとく」

わざわざこんな寒空に好き好んで出ようとは思わない。
そして、他愛も無い話をしていると玄関に着いた。

名雪「じゃあ、私は行くね」
祐一「ああ。 部活頑張れよ」

俺は靴を履き替えると、思い出したように名雪に言った。

祐一「あ、そうだ名雪。 俺がお前の家に居候してることは誰にも言うなよ」
名雪「え…なんで?」
祐一「なんでって、そりゃ変なウワサでもたったら困るだろ」

俺がそう言うと、名雪は苦笑いしながら言った。

名雪「…ゴメン、祐一」
祐一「え? まさか…」
名雪「朝みんなに言っちゃった……」
祐一「おい! 普通そういうこと隠しとくだろ!!」

もう手遅れだった…。
そして名雪は脱兎の如く、陸上部部長らしく素早くグラウンドの方へ消えていった。
最悪だった…。
これでもう俺たちには変なウワサが流れるのが予想できる。
もう、明日学校へ行くのが鬱になってしまったのである…。

そして俺は、鬱を引きずりながら当ても無く商店街へと向かった。
今日は特にすることもないので、商店街で時間を潰そうと思ったのだ。
商店街は昼前ということもあって、買い物に来ていた主婦で賑わっていた。
そんな商店街の中を歩いていると、前方から聞いたことのある声が聞こえてきた。

*「あ〜! どいてどいて〜!!」
祐一「え?」

なんだか前にもあったパターンだ。
もしかしてこれはデジャヴってやつか…?
俺がそう思っていると、声の主が俺に近づいてきた。

*「あ〜、どいてよ〜!」
祐一「う……お前は…」

それは、紛れも無く昨日この場で会った迷惑少女、あゆだ。
俺は例の如く走ってくるあゆをひょいと避けると、あゆは思いっきり転んで顔から転倒した。

あゆ「うぐぅ〜……い、痛いよ…」
祐一「またお前か…」

あゆは鼻を擦りながら俺を見上げる。
雪の降り始めた灰色の空の下、再び運命の何かが動き始めていた…。



      

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