朝のひと時


*「あさ〜、朝だよ〜」

毛布と布団を被って寝ていた俺に、誰かが起こす声が聴こえる。

*「あさ〜、朝だよ〜」

やる気の無い声で、うるさい声量で俺を起こす。
仕方なく俺は体を起こした。

*「あさ〜、朝だよ〜」
祐一「あ〜、分かった分かった……」

しかし起きてみても、そこには誰もいなかった…。
そのうるさい声の主は、昨晩名雪に借りた目覚まし時計だった。

*「あさ〜、朝だよ〜」
祐一「あ〜、うるせうるせー!」

俺はそのうるさいのを叩いて止めると、ベッドから抜け出した。
と、途端に真冬の寒さが俺を襲う。
タイマーでつけていたエアコンは既に消えている。
冷たい床を踏まないようスリッパを履いて部屋を出る。
洗面台で顔を洗い、トイレを済ませて1階へ降りてリビングへと向かう。
そこには、既に秋子さんが朝食を用意していてくれていた。

秋子「あら、祐一さん、おはようございます」
祐一「あ、おはようございます」

秋子さんは笑顔で朝の挨拶をしてくれた。
俺はいつもの場所に座ると、名雪を待つことにした。

秋子「名雪、遅いから先に食べちゃっていいわよ」
祐一「え、ああいいです、待ってますよ」

秋子さんはそう言ってくれたが、俺だけ先に食べるわけにもいかない。

祐一「…あ、俺名雪を起こしてきますよ」
秋子「あらそう、じゃあ、頑張ってね」

俺はそう言うと席を立った。
……ところで何を頑張るんだ?
そして、名雪の部屋の前まで来てノックしようとしたその時!!

   ジリリリリリ!!!!

目覚ましが音が鳴ったと思ったら、次から次へと音が増えていく。
やがて、とてつもない音量になり、鼓膜が破れそうになる程にまで大きくなった。

祐一「おいおい、名雪は一体いくつ目覚まし使ってるんだ!?」

ノックしても当然返事が無い。
俺はドアを開け、轟音轟く室内へと突入した。
そして目覚ましを一つ一つ止めていき、14個止めてやっと静かになった。

祐一「はぁはぁ……死ぬかと思った…」
祐一「全く…いくつ持ってんだよ…コイツは……」

俺は傍のベッドですやすや寝息を立てている名雪を見る。
あれだけの音でも起きないなんて…ある意味すごい奴だな……。
……そういえば名雪の寝顔を見るのは初めてかも。
すっかり成長して『女』になった名雪…。
その安らかな寝息は、刺激の満たされていなかった俺を十分に興奮させていた。
名雪を異性として認識してしまった俺は、名雪を起こすことが急に気恥ずかしくなってしまった…。
俺がどうしようか迷っていると、名雪が急に起き出した。

名雪「う〜ん……ふぇ……え…祐一…?」
祐一「あ、起きたか。 早く起きろ、もう朝飯できてるぞ…」

それだけ告げると、俺はとっとと部屋を出てリビングに戻った。

秋子「ご苦労様」
祐一「…はい……」

そして暫くすると、名雪が降りてきた。
分厚いカエル柄の半纏を着て、今にも眠りそうな瞳で席に座る。

名雪「おはようございます…」
秋子「おはよう。 早く食べないと遅刻するわよ」
祐一「あの、ところで、その瓶は何ですか?」
秋子「ああこれね。 食べてみる?」

秋子さんが笑顔で答える。
怪しげな色合いから、俺はどうしてもそれに手を着けることが出来なかったのである…。



        

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送